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2019-02-06 00:00
(連載2)日露領土交渉の打開策
加藤 成一
元弁護士
さらに、返還される北方領土の主権の問題については、確かに1956年の日ソ共同宣言9項には「歯舞群島及び色丹島は平和条約締結後に現実に引き渡されるものとする」と規定され、引き渡し後の主権の所在については明記されていない。
しかし、(1)日ソ共同宣言当時、ソ連側が上記二島の引き渡しに同意したのは、二島がもともと北海道の一部であり日本の主権下にあったこと、(2)条文上も主権を留保する旨の条件付きの引き渡しとはされていないこと、(3)ロシアも加盟している条約法に関するウィーン条約31条には「条約はその趣旨及び目的に照らし用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする」と規定され、「領土引き渡し」の通常の意味は、主権を含むと解されること、などの諸点を考えれば、ロシア側の「返還後の主権の所在は未確定」との主張は上記条約法に関するウイーン条約31条及び日ソ共同宣言の趣旨及び目的にも反すると言える。日本側は、以上の諸点から、領土の返還には主権も含まれることをロシア側に誠実に主張すべきである。
また、「南クリール諸島はロシア領であることを認めよ」との主張については、日本側としては、第二次大戦後現在までロシア側が一貫して北方領土を「実効支配」している事実を認めることにとどめるべきである。なぜなら、領土問題の解決前に北方領土のすべてがロシア側の主権下にある「ロシア領」であることを認めれば、日本側は領土返還請求についての国際法上の法的根拠を失うからである。日本側としては、「領土」の帰属について争いがあるからこそ、領土問題を解決し平和条約締結の必要性があることを国際法に基づきロシア側に明確に主張すべきである。
ロシア側が、ここにきて、日本側に対して本音ともいえる厳しい主張を矢継ぎ早に打ち出してきたのは、逆に言えば、それだけ安倍政権との間で早期に真剣に平和条約締結及び北方領土問題を解決する意思がある証左である。ようやく、日露交渉は大詰めに入ってきたのであり、日本側としては、平和条約締結と北方領土問題の解決は、ロシア側にとって政治的経済的に有益であるのみならず、対米対中安全保障上も有益であることを事実に基づき具体的に主張すれば、必ずや道は開けるのであり、決して悲観することはない。(おわり)
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