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2019-01-24 00:00
安倍首相の焦り
岡本 裕明
海外事業経営者
最近、安倍首相の名前が以前ほどメディアに上がってこない気がします。メディアに上がってこないというのは二つの場合があって、上げるネタがない場合と、上げないようにしている場合です。安倍首相にネタがないということは考えにくく、何か見えない戦略があるように感じます。首相としては、フルマラソンで30キロを超えてきたところぐらいでしょうか?ゴールを意識しながら残りのプランを考えるにしても、首相が積み残している案件はあまりにも多い気がします。ロシアとの北方領土交渉、アメリカとの日米物品貿易協定(TAG)、北朝鮮問題、日韓問題、中国との外交関係といった外交問題のほかに、憲法改正、消費税増税、東京オリンピック、アベノミクスの構造改革も道半ば、自身の後継者育成などもあろうかと思います。
ロシアとの北方領土問題の交渉を例にとりましょう。私は首相のロジックにやや強引さがあるように思えます。日本政府は従来の「4島返還」スタンスを、一気に「2島先行返還論」に近い形にしました。かつて、2島先行返還論は何度かあり、一番有名なのは鈴木宗男氏、および元外務省の東郷和彦、佐藤優両氏が押し進めていた時のものですが、直ぐに潰されました。誰に潰されたかいろいろ言われていますが、個人的にはアメリカと外務省北米スクールだったと認識しています。北方領土問題は、極端な言い方をすれば日本の主張というより、アメリカの都合で勝手に振り回されてきた、というのが実態です。もともとは2島だけ、それが4島に、そしてまた2島に戻ってきており、時代の流れとともに日本の世論の受け止め方も変わってきているとも言えるのでしょう。つまり、安倍首相は、アメリカとの下地を既に作った上での2島先行返還論をしているのかもしれません。
確かに今、「時の風」が吹いているのかもしれませんが、政府だけが突っ走っている感は否めません。すごく焦っている、そう見えるのです。もちろん、私は交渉はどんどん進めるべきだと思いますが、その進め方にやや違和感がないとは言えません。日韓問題についても結果を急いでいます。多分、日米物品貿易交渉もそうでしょう。なぜ急ぐのかといえば、上述のように残りの任期に対して積み残しが出そうな感じがあることと、最後の大物、憲法改正に向けた道筋がまだかなり遠いからだろうと思います。
安倍首相は、G7の中では最古参の一人として、世界の主要国リーダーの誰もが知っている日本の首相として、君臨しています。確かに、歴代の日本の首相としても、誰もが成しえなかったほどの認知を受けているわけで、大首相の名にふさわしい方だと思っています。しかし、私はこのところ、外交に関しては拙攻というか、攻め方が雑な気がします。その結果、雰囲気としては、海外における日本のポジションが逆に弱まっている感じがします。IWC(国際捕鯨委員会)を脱退したのは今でも間違いだと思いますし、レーダー照射問題の国際世論を日本側に引き寄せる対応も、ちょっと違った気がします。ロシアのラブロフ外相との北方領土問題について、温度差があるとする点に関して、日本はロシアとの交渉が難しいという論調ですが、実際には日本側が難しいのではないかと思う時もあります。私は積み残しが出ても構わないと思っています。それよりも、安倍首相が悔いのない結果を残すべきだと思っています。できるものだけ、3つでも4つでもやればいいでしょう。日本がそれで消えてなくなるわけではないのですから。
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