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2019-01-18 00:00
頑固な英国人気質が向かうところ
岡本 裕明
海外事業経営者
英国のメイ首相ほど頑固一徹な政治家も少ないかもしれません。与党内から厳しい批判にさらされ、国民からも冷たい視線を浴びても、全くそのスタイルと政治姿勢を変える様子は見られません。先日の英国議会におけるEU離脱案の採決は、反対票が230票も賛成票を上回り、メイ首相にとって歴史的敗退、そして反メイ派にとっては歴史的勝利となりました。メイ首相の不屈の精神はある意味、立派だと思いますが、ここまで否定された以上、自身のやり方に間違いがあったことは素直に認めざるを得ないでしょう。私は、メイ首相は国民投票のやり直し、国民がやはり離脱を希望するなら、メイ首相の進めるEUとの離脱合意案を説得させることもできるが、国民に再考の余地を与え、離脱を望まないなら離脱しない、という選択肢も、国民の代表者として検討した方がいいのではないか、という趣旨のことを述べてきました。
今頃、英国議会では次の一手について様々な憶測が飛び交っているでしょう。あらゆる選択肢を再度、テーブルに並べることができるからです。実際、野党、労働党は内閣不信任案を提出しました。しかし、これは労働党とコービン党首のそもそもの目的が政権交代であって、目先に迫るEUからの離脱については、明白なビジョンとその実行案を持ち合わせているわけではありません。この内閣不信任案は通過しませんでした。となれば、21日に示すメイ政権の「新案」に注目が集まるのですが、何が出てきても決定打はない気がします。最大の理由は、与党内で本案件について完全に分裂していることにあります。強行離脱派から離脱反対派まで、議員同士が激しく、そしてここでも頑固に自身の考えをぶつけあう中で、英国議会を一つの方向にまとめるのは、仮にどんな優秀な政治家でもってしても、もう手遅れのような気すらします。
今更、と言われるかもしれませんが、メイ首相にもともと手腕がなかったと言わざるを得ません。そして、そんなメイ首相を選んでしまったいきさつをもう少しさかのぼれば、離脱強硬派のボリス・ジョンソン氏が、国民投票の時点で、その期待を裏切って首相の座につかなかったことがきっかけだった気がします。メイ首相は離脱派ではなかったのに「国民の意思を実現させるために」という本心に仮面を着けざるを得なかったところに、そもそも論があったのでしょう。一方のEU側も苦悩となります。仮に合意なき離脱になった場合、英国とEUを結ぶ貨物は滞り、必要な物資が届かず、それを管理するオフィサーも足らず、仕組みも間に合わない、という悲惨な結果を生むことが目に見えています。混迷を極める、と断言してよいと思います。
個人的には英国は離脱を止める気がしています。EU離脱は英国には乗り越えられないあまりにも難しい課題だった気がします。ではなぜ、あの時、国民は離脱を選んだのか。それは直面する移民問題よりも、メディアが作り出した世論が大きかったのだろうと思います。英国社会が、表向きは平等であっても一種の階級社会の名残がある中、タブロイド紙とパブでの議論が生み出した新たな英国病だということではなかったでしょうか。
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