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2019-01-17 00:00
フランスのマクロン大統領について
真田 幸光
大学教員
先日、本e-論壇に投稿した通り(2019年1月7日付け)、「今年の欧州情勢は世界経済の混乱要因となる可能性がある。」と私は考えています。そして、その欧州の混乱要因の一つが、これまで、ドイツと共にEU体制を堅持すべく努力してきたフランスの最高指導者・大統領であるマクロン大統領の権力掌握力の低下であります。そのマクロン大統領は、昨年末、「燃料税の引き上げ」を背景にして、フランス国民から厳しい目を向けられ、その結果、「マクロン大統領の経済政策に対する不満」へとフランス国民の不満が拡大、更に、「フランス大統領としての資格に対する不信」にまで繋がり、フランス全土に拡大した「黄色のチョッキのデモ」へと発展してしまいました。
私の見るところ、フランス経済の現状を見ると、マクロン大統領の経済政策、特に財政基盤の改善に向けた政策展開は間違いではないと思えるのですが、フランス国民からすると、「エリートたる政治家たちがその身を正し、国民に接しなければ、その政治的発言には重みがない。」ととらえられているようであり、結局、マクロン大統領はフランス国民に対して多くの譲歩を行うこととなりました。その上で、マクロン大統領は今年に入り、「税制、エコロジー(地球環境)、民主主義、移民、国家組織」について「国民的議論」を行う準備をしています。マクロン大統領は、今回予定している国民的議論を通して、本年4月以降に具体的政策を取る予定であると言われていますが、果たして、フランス国民がマクロン大統領の呼びかけに答えてくれるか否かは不透明です。最近の世論調査によれば、マクロン大統領が提示する改革案のうち、フランス国民は「失業対策については、32%が賛成、年金改革については29%が賛成。国民の購買力向上については73%」などとなっており、「テロ対策、失業問題、年金改革」といった点に関心はあるものの、マクロン大統領がこうした問題と同様に重要視していると見られている、「エコロジーやヨーロッパ問題」には、フランス国民は、あまり関心を寄せていない模様であります。
一方で、「黄色のチョッキ」のデモを受けてマクロン大統領が行った譲歩によってフランスの財政赤字は、EU基準であるGDP対比3%を超えるものになる見込みであり、これをEU政府から指摘されるようになると、フランス国内から、イタリアと同様に、「何もEU基準に単純に従う必要もないのではないか?EU政府から厳しく指摘されるようであれば、フランスもEUからの脱退を考えてもよいのではないか?」と言った意見が出てくる可能性もあり、EU堅持派であろうマクロン大統領は再び、厳しいポジションに追い込まれる可能性もあります。
マクロン大統領にとって、そしてマクロン大統領率いるフランスがどうなるのかを見つつ、EUにとって、今年は一つの正念場の年となるかもしれません。
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