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2019-01-10 00:00
(連載1)民主主義を危機にさらす選挙対策
中村 仁
元全国紙記者
選挙が民主主義を支えているという原理、原則が怪しくなってきました。大衆迎合的な選挙そのもの、有権者をイメージ操作する選挙対策を通じて、民主主義の危機が深まっているように思います。最近の1年間だけでも、「民主主義の死に方/選挙が独裁をもたらす逆説」(米ハーバート大教授、新潮社)、「民主主義を脅かす格差拡大」(ファイナンシャルタイムズ紙コラム)、「各国で代表民主主義の危機」(パリ大講師、読売コラム)、「東欧革命、ゆがむ民主化」(日経ベルリン発)、「欧州覆う政治不信/ポピュリズムデモ」(読売ブリュッセル発)などなど、いくらでも記事を拾えます。
選挙対策が民主主義社会を脅かしている重要な要素だという気がしてなりません。佐藤優(元外務省)・手嶋龍一(元NHK)両氏の近著『米中衝突 危機の日米同盟と朝鮮半島』(中公新書)に「選挙では、対外的な緊張が高まっていたほうがいい。そこで北朝鮮の核実験やミサイル発射を最大限利用し、Jアラート(全国瞬時警報システム)を何度も発動して、危機を煽った」という指摘がでてきます。
こうした見方は、以前から唱えられています。具体的な証拠、根拠はあるのでしょうか。佐藤氏は著書で「Jアラートを設計したのは私なんです、という人物に出合った」と、書いています。佐藤氏は事務次官経験者らのOB会の懇談に招かれ、Jアラート批判を繰り返しました。その時のことです。「アラートのマニュアルに、屋内では換気扇を止めましょう、窓に目張りをしましょう、とある。これは化学兵器による攻撃を想定している。北朝鮮から飛来するミサイルは飛行中に数百度の高熱を帯びる。サリンなどの化学物質は熱に弱く、日本に着弾する時には無害化している。生物化学兵器も同じ。なぜ無意味な注意喚起をするのか。」これは佐藤氏の批判の一例です。
元高官は「実はイスラエルのマニュアルをそのままコピーしているのです。」と、正直に答えました。イスラエルなら近距離から化学兵器で攻撃される可能性が常にある。それを事情のことなる日本に横滑りさせたと、佐藤氏は判断します。「異様なアラートの原本はイスラエルにあった。実際には役に立たないものなのに、政権にとっては使いでがあった。」危機の政治利用が両者の結論です。(つづく)
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