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2018-12-21 00:00
米国の戦略と世界
真田 幸光
大学教員
現行の世界の中核国家が、「アメリカ合衆国」であることは否定できない事実であります。例えば、ビジネスの世界に於ける標準を見ても、言語は英語、通貨は米ドル、法律基準は英米法、ものづくり基準はISO、会計基準は英米会計、となっており、米国は世界標準を押さえつつ、世界に厳然たる影響力を持っています。しかしその一方で、最近では「米国の威信低下」も顕著に見られ、私が見るところ、「だからこそ、米国のトランプ大統領は、米国威信回復の為、手段を選ばず、アメリカ・ファーストで国威発揚を目指している。」とも思われるのであります。しかし、それに立ちはだかるのは、かつて覇権を競った旧ソ連の系譜をひくロシア、そして成長著しい、眠りから覚めた中国本土ではないかと思いますし、米国を側面から支えてきた英国の動きも気に掛かるところであります。
さて、そのアメリカ、ご高尚の通り歴史の浅い国で、建国は1776年7月4日であります。こうした歴史の浅さと多民族国家であるという国家としての出自は、歴史を大切にする欧州、例えば、フランスなどからすると、如何に大国となっても、アメリカを心から尊敬していないと言う背景になっているでありましょう。しかし一方で、アメリカは3億2300万人、世界第三位と言う人口を背景に市場は大きく、更にその優秀な労働力と豊富な天然資源と農業生産を持ち、経済成長力の高い国として、やはり、一目置かれる国であります。また、脱工業化を目指しているようにも見えますが、実際には自動車、航空機、パソコンの生産にも強く、製造業とIT分野では世界トップの国の一つであります。更に忘れてはならないのは、世界の軍事支出の4割弱はアメリカが占め、防衛産業にも影響力を持つ国であることは間違いありません。
こうして世界から注目されるアメリカには、世界有数企業が集まり、また、米国の証券市場で上場する、これによって、アメリカの証券取引所の影響力は世界に及ぶと言う循環も持っており、実体経済のみならず、金融経済に於いてもその地位は近いと見ておくべきであります。そして、こうしたことを背景として、アメリカは高い技術開発力、高い生産力、高い消費力を持ち、世界に於ける相対的な影響力を失いつつも、やはり、「世界一の国家」の地位を保っていると見ておくべきでありましょう。一方で、私はアメリカも中国本土同様に、「規模の経済性」を追うビジネスを主としており、「大量生産、大量販売」のビジネスモデルの下で、国家運営がなされていることから、「高い技術力や労働力、そして、豊富な資源を背景にして供給拡大路線を取る。」特に、インフレ抑制、減税、規制緩和などを背景にして、「供給サイドを膨らませることが好きな国」であると思われ、従ってアメリカが次に行うことは、その供給を賄う為の「消費サイドに刺激を与える傾向が強い国」になり、場合によっては、「消費者サイドに借金をさせてまで、消費を拡大させる、インフラ開発を進めさせる」ということを誘導しがちな国であります。
しかし、こうして起こる所謂「バブル」はその後の崩壊リスクに晒され、最近ではサブプライムローン問題から発生したリーマンショック、そして、これを遠因として今もまだ傷跡の残る、欧州先進国の財政危機などの問題も生んでいるのであります。そして、こうしたアメリカの国家経済運営は、「防衛産業の拡大による戦争リスクの拡大」、「消費過剰による地球環境問題の拡大リスク」を生んでいると私は見ており、このままでのアメリカの繁栄路線は、地球全体にとって決して歓迎されるものではないとも考えています。地球規模での世界運営が問われる時期に今、我々は差し掛かっているのではないでしょうか。
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