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2018-12-14 00:00
(連載2)入国管理法改正案の問題点
倉西 雅子
政治学者
ベトナム等の東南アジア諸国では、現行の外国人実習制度を通して訪日する外国人の多くは、手数料や日本語研修等の名目で100万円ほどの借金を斡旋業者等に負っているそうです。日本国での給与は月収12万円ほどですので、生活費を差し引けば借金完済には相当の年月を要します。また、職場に対する不満から途中で帰国しようとしても、借金が残っているためにその望みも叶いません。外国人実習生制度の問題点は、低賃金や労働条件のみならず、前借金システムによる斡旋業者や派遣業者による束縛にもあるのです。
入国管理法改正によって新資格が創設されれば、外国人技能実習生の多くが特定技能1号に移行すると説明されていますが、日本人と同等の賃金や待遇が約束されても、‘前借金システム’が温存されていれば、外国人労働者は、特定の斡旋業者や派遣業者、あるいは、それの背後に控えている金融業者の‘餌食’となりましょう。また、5年間で最大34万人もの受入枠が設定されておりますので、市場の‘パイ’も大きくなります。
もっとも、政府の説明では、外国人労働者やその家族の日本語教育等については雇用者や地方自治体等が責任を負うとしており、これが来日外国人労働者の個人負担の軽減、即ち、前借の不要化、あるいは、減額を意味するならば外国人労働者にとりましては朗報となります。しかしながら、その分、特に一般の日本国民は財政面のみならず、行動面や精神面でも負担だけを負わされますので、同法案に対する反対の声はさらに強くなりましょう。
何れにしても、‘人の移動’をビジネスにしている人々は、外国人労働者、並びに、受け入れ国の一般国民を犠牲にしつつ、自らの負担やコストは他者に転嫁すべく‘いいとこ取り’を狙っているようにも見えます。国境を越えて人を移動させるだけで、自らの懐に莫大な利益が転がり込むのですから。入国管理法改正よりも、まずは、‘前借金システム’を含め、既成事実化されてしまっている外国人技能実習制度の諸問題について議論すべきなのではないでしょうか。1872(明治5)年、当時の日本国政府は、人道主義を唱えて清国から‘輸出’された苦力を解放しましたが(マリア・ルス号事件)、今日にあってなおも、日本国は、名誉ある人道国家であるべきと思うのです。(おわり)
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