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2018-12-13 00:00
(連載1)入国管理法改正案の問題点
倉西 雅子
政治学者
大航海時代の幕開けにより、‘人の移動’とは、自らの力を信じ、新天地に夢を求めて海を渡る独立心と、進取の精神に富んだ人々のチャレンジとするイメージが振り撒かれています。しかしながら、この華やかな冒険時代の裏側では、新大陸の需要に応えるべく労働力として売買された奴隷貿易船も広大な大西洋を行き交っていました。‘人の移動’に纏わる‘光と影’は、‘自由と束縛’と見事なまでに対照を成しています。そして、‘人の移動’の影の部分に注目すると、近代の奴隷狩りによる奴隷売買とは異なる、別の‘束縛’の手法をも見出すことができます。奴隷の歴史を遡りますと、戦争が最も典型的な奴隷化の契機ですが、他にも幾つかの奴隷化の形態があります。
その一つに債務奴隷と呼ばれるものがあり、これは、借金を返済できなかった債務者が債権者の奴隷とされるという形態です。例えば、古代ギリシャのアテネでは、早くから貨幣経済の発展した商業都市であったこともあり、債務奴隷の数が激増したため、紀元前594年には、執政官となったソロンが借金の帳消し政策を実施し、奴隷に転落した人々を市民に復帰させると共に、海外に奴隷として売り払われた元アテネ市民をも祖国に呼び戻しています。この時代、借金とは、金銭を得るのと引き換えに、奴隷身分への転落や海外売却のリスクを伴う危険な行為でもあったのです。
債務奴隷制度は古代に限られたことではなく、近代に至るまで、姿や形を変えながら同様の制度が世界各地で行われてきました。シェークスピアの名作『ベニスの商人』も、借金の形に命を失い兼ねなかった青年の救出劇として知られています。また、実のところ、特定の職業への就業に伴う前借制度は、日本国でも、炭鉱労働や風俗業などにしばしば見られた形態なのです。
‘身売り’とも表現されたように人身売買的なニュアンスが伴うため、国内では前借による雇用契約は殆ど姿を消しましたが、今日なおも完全に消滅したわけではないようです。そして、僅かに残された‘前借金システム’こそ、海外における外国人労働者の募集に他ならないのです。(つづく)
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