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2018-11-22 00:00
(連載1)日本国政府の‘海外ファースト’のリスク
倉西 雅子
政治学者
多文化共生主義に基づく入国管理法の改正案は事実上の移民政策であり、かつ、‘海外ファースト’の原則の確立を意味するのですが、日本国政府の海外優先の姿勢は、この問題に限ったことではありません。人手のみならず、中小企業の後継者不足の問題までも、常に海外から人を国内に呼び込むことで解決しようとしております。あたかもそれが唯一絶対の方法であるかのように。また、日本から海外への逆方向の流れも加速させようとしています。例えば、食糧自給率が低下傾向にあるにも拘わらず、農産物の輸出にも熱心ですし、TPP11についても、中小企業の海外での事業展開を支援する方針を示しています。
グローバル化はビジネス・チャンスでもありますが、こうした‘海外ファースト’を原則とする一連の日本国政府の政策は、モノ、サービス、マネー、人、情報、技術といったあらゆる要素が国境を越えて自由に移動する‘グローバル市場’の形成に向けた国際レベルでの統合計画の一環なのでしょうか。現実の世界では、国民国家体系が国際秩序を保っており、経済分野であれ、様々な政策権限を国家が有し、国家の領域を枠組みとした法域を形成し、かつ、国家間の経済レベルには格差があります。この状態では、経済原理のみが支配する純粋な‘グローバル市場’は成立するはずもなく、無理にでもこの方向を進めようとしますと、国内経済が、幾つかのリスクや危機に直面するケースも予測されます。グローバル化に付随する問題は、昨今、関心を集めている移民問題のみではないのです。
第1のリスクは、他の国で発生したリスクが自国にまで連鎖的に波及する点です。1929年の世界恐慌の事例や2008年のリーマンショックを挙げるまでもなく、世界規模での経済の一体化は、一国の政策の失敗が他国の経済をも破滅に追いやるリスクがあります。特に、経済大国が震源地となる場合の世界レベルでの被害や損害は甚大です。経済自由化の流れの中で、各国とも自由化措置を急いできましたが、国境という危機を遮断するファイアー・ウォールが取り除かれた状態にあっては、最早延焼を防ぐことはできません。今般、トランプ政権の対中制裁関税は、自由貿易主義の流れに逆行する政策として批判を浴びていますが、ファイアー・ウォールの視点からしますと、中国発の世界規模の金融・経済危機の発生に備えた米経済の予防的遮断措置なのかもしれないのです。
第2のリスクは、グローバル市場への依存体質の深化による国内経済の脆弱化です。このリスクの事例としては、IMF主導で通貨危機をかろうじて乗り切った韓国経済を挙げることができます。同国は、IMFからの支援を受けるのと引き換えに、徹底したリストラ、並びに、選択と集中を含む新自由主義に軸を置く構造改革の実行を受け入れました。この結果、外需向けのサムスン、LG、現代、SKといった少数の財閥はグローバル企業として生き残りましたが、内需面での成長は疎かにされ、財閥系企業がコスト面から国外に製造拠点を移す動きと相まって、若年層を中心に失業率が高止まりした状態が続く結果をもたらしています。しかも、これらの財閥系企業も、中国系企業の急速な台頭により‘グローバル市場’で苦戦するに至りますと、同国は、内外両面において苦境に陥ることとなるのです。(つづく)
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