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2018-11-14 00:00
(連載2)時間経過と共に日本国が不利となる日中経済関係
倉西 雅子
政治学者
さらに、日系企業の中国市場における新規事業の拡大についても、二の足を踏まざるを得ないようなマイナス情報に満ちています。毛沢東時代への回帰を志向する習近平独裁体制が強化されて以来、中国共産党による民間企業に対する支配は一段と強化されています。中国では、民間企業と雖も共産党員の配置が法律で義務付けられており、経営に口を出すルートが確保されています。企業統制の強化は、当然に外資系企業や外国企業との合弁会社等にも及びますので、日系企業の‘中国進出’は、中国共産党による‘日本支配’とセットとなっているのです。
しかも、長期的に見ますと、ここでも日本企業は苦戦を強いられます。今般の日中関係改善については、アメリカが知的財産問題に神経を尖らせる折、同国からの先端技術の入手が困難となった中国側が、「中国製造2025」を実現するための代替供給地として、日本国に白羽の矢を立てたとする説明があります。しかしながら、メディア等の報道によりますと、中国のシリコンバレーとも称される深センを擁する中国の技術力は、既に日本国を上回っており、最早、日本国の技術を必要としていないともされています。この説が正しければ、日本の技術力目的説は疑わしく、中国の対日接近の目的は金融面に絞られており、既に不要となった、あるいは、技術を吸収し尽くした日系企業は、やがて中国企業が構築するサプライチェーンに組み込まれるか、資金力に優る中国企業のM&Aによって買収されるか、あるいは、巨体化した中国企業の直接的な進出によって国内市場のシェアさえ失うこととなりましょう。
そして、日本経済が中国経済との結びつきを強めますと、時間の経過とともに相手国への依存度は日本国の中国依存へと傾き、それは、中国に対して強力な対日‘経済締め付けカード’を渡すことを意味します。その前例として、韓国において、THAADの配備をめぐって中国との関係が冷却した際に、中国は、中国市場に進出した韓国企業に対して厳しい制裁措置を課しています。経済的威嚇の効果なのか、韓国では親北の文在寅政権が誕生し、北朝鮮、並びに、その背後に控える中国のメッセンジャー役に堕しています。日本経済が中国経済に依存すればするほどに日米同盟も脆くなり、いわば、経済を中国に‘人質’に取られる格好となるのです。
米中関係については、真珠湾攻撃前夜の日本国に中国を喩える見解も見受けられますが、両国が太平洋戦争の開戦に匹敵する程の緊迫状態にあればこそ、たとえ中国が微笑みを浮かべて近づいてきたとしても、迂闊には応じられないはずです。日本国は、自らの安全をも脅かす非人道的な全体主義国家中国と運命共同体にされる道だけは、決して歩んではならないと思うのです。(おわり)
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