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2018-11-06 00:00
(連載2)リーマンショックについて
真田 幸光
大学教員
一方、視点を日本にのみ移し、日本の国家財政に不安がある中、日本企業の状況について、概観してみます。日本の国内企業の業績は、2007年度を100.0とすると全企業の売上高合計は2017年度で98.8に留まり、リーマンショック前の水準に戻っていないとされています。一方、利益合計は162.0に伸び、売上高と好対照となっています。震災復興や東京五輪に向け好調な建設業、物流が盛り返した運輸業が牽引していると報告されているものです。しかし、詳細を見ると、非上場の小売業は売上高合計・利益合計ともに100.0に戻しておらず、戦後2番目の好景気と言われる中で、少子高齢化による需要減少や大手の寡占化で業績回復はまだら模様となっています。
尚、これは、東京商工リサーチが保有する国内最大級の企業データベース(約480万社)を活用し、リーマンショック前の2007年度(2007年4月期~2008年3月期)から直近の2017年度(2017年4月期~2018年3月期)まで、11期連続で単体の業績比較が可能な26万5,763社を抽出し、分析した結果を引用しています。そして、全企業の売上高合計は2009年度に84.7まで下落、その後は一度も100.0に回復しておらず、一方、利益合計は2008年度は18.1と極度に落ち込んだものの、2013年度に100.0に回復し、2017年度は162.0まで回復しています。そして、2017年度は上場企業の利益合計が165.6に対し、非上場は158.4に留まり、円安を背景にした上場企業の回復と中小企業のもたつきが鮮明になっています。
また、全企業の利益合計は2017年度に162.0に回復しましたが、売上高は100.0を下回っており、利益面は技術革新や製品の差別化、生産性効率の向上などが寄与したものの、海外移転に伴うコスト削減、正社員から非正規社員へのシフトなど、人件費抑制や労働分配率の低下も影響していると見られ、労働分配率の低下は、個人消費の落ち込みに直結するだけに、小売業や耐久消費財関連の企業業績への影響が出たとも言われています。
こうして見ると、社会全体に傷を残しながら、一部企業の業績が回復、そこにまた、個人間のみならず、企業間格差の拡大ももたらしており、これを基にして、「日本の企業業績の回復と言えるのか?デフレからの脱却トレンドにあるのか?」と問われれば、答えは「疑問」とならざるを得ないと思います。こうなると、日本がとるべき対策は、「消費税を含め、増税をせざるを得ない。その増税分の半分を国家負債の返済に明確に当て、これを内外に明確に示す。その増税分の残り半分で最近脆弱となっている国土インフラの再整備、強靭化に向ける。国土インフラの再整備に関しては、地方インフラの再整備をできる限り優先し、地域格差を少しでも少なくする政策的配慮を図る」といった骨太の指針を、日本政府が日本国民に、そして世界に明確に示し、「日本が回復トレンドに入った。」ということを印象付ける政治的行動に出ることが、ベストウェイではないかと私は考えています。(おわり)
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