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2018-10-16 00:00
(連載2)東京‘金融市長’の行方
倉西 雅子
政治学者
さらに、第3の問題点として挙げられるのは、日本の国内経済が停滞する中、大量の海外マネーを呼び込みますと、金融市場や不動産市場、あるいは、外国為替市場等においてバブルや乱高下が起きかねない点です。実体経済と金融が乖離しますと、東京での金融取引は、健全な投資ではなく投機がその中心となりましょう(‘金融カジノ化’)。金融偏重の政策は、産業革命の発祥の地であったイギリスの産業衰退に拍車をかけましたが、日本国もまた、国内の実体経済との結びつきを欠いたマネーの流れは、産業にとりましてはマイナス要因として働く可能性があります。
また、最先端の金融テクノロジーとしてのフィンテックの導入につきましても、‘シティ・スタンダード’の日本の金融市場への拡大を意味するかもしれません。言い換えますと、表向きには東京都のイニシャチヴによる政策のように見せかけながら、その実、国際組織であるシティによる日本攻略戦略の一環なのかもしれないのです。第4の問題点は、主導権がシティ側に握られている可能性であり、この点からしますと、東京‘金融市長’とは、シティ側のメッセンジャーとなります。
最後に、民主主義の観点から見た問題点を指摘するとすれば、同職の就任は、選挙という民主的手続きを経ていない点です。‘市長’という行政分野の市長との同等性を表すタイトルを用いるならば、その任免の手続きには、都民の声が反映されて然るべきです(もっとも、同制度の母国イギリスでも選挙は実施されていないらしい…)。また、同政策が及ぼす影響の広範性に思い至りますと、都知事の決断のみを以ってかくも重要な政策が決められ、既定路線化してしまう現実に空恐ろしささえ感じます。
以上に主要な問題点を述べてきましたが、今般の東京都の動きは、ロンドンとパリを舞台とした『二都物語』ならぬ東京を加えた『三都物語』の序章なのでしょうか。この問題は、その舞台が日本国の首都東京であるだけに、都民ならず、日本国民の重要問題でもあります。移民による首都乗っ取り問題が、一般のイギリス国民のEU離脱支持の一因ともなったように、東京がロンドンとなる日は、一般の日本国民にとりましては、必ずしも歓迎すべき未来ではないように思えるのです。(おわり)
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