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2018-10-15 00:00
(連載1)東京‘金融市長’の行方
倉西 雅子
政治学者
日経新聞朝刊(2018年10月1日付)の第1面に、東京‘金融市長’なる聞き慣れない名称の公職に関する記事が掲載されておりました。同職の初代に前日銀副総裁の中曽宏氏が就任したとする記事です。同記事によりますと、‘金融市長’という公職は、東京都のオリジナルではなく、イギリスの首都ロンドンの金融街、シティに設けられている‘ロード・メイヤー’を模倣したものです。シティの同職は700年ほどの歴史があるらしく、現在、第690代目となるそうです。そして、この来歴からして、東京の‘金融市長’にも、凡そ明治維新に遡る国際金融の影が垣間見られるのですが、日本国の首都である東京都に‘金融市長’を創設するとする案そのものは、小池百合子都知事が昨年末頃から言い始めたもののようです。
その主たる目的は、東京都をロンドンのシティに匹敵するほどの国際金融都市に育てることにあり、既に、ロンドンのシティとも双方の協力に関する覚書が結ばれています。そして、この政策の責任者こそ、東京‘金融市長’なのです。具体的には、設立されるプロモーション組織の長として海外を飛び回り、東京への海外の金融関連機関の誘致、海外からの投資の呼び込み、金融関係の海外要人の接待、フィンテック導入の促進…等に尽力するのが主たる任務としているようです。金融のハブ化面でのメリットが強調される反面、東京‘金融市長’には、幾つかの問題点もありそうです。
第一の問題点は、東京都が、国際金融都市化によってロンドンと同じ運命を辿ってしまうことです。現在、ロンドンの人口は既に移民系住民が50%を越えており、行政職の市長もイスラム教徒のサディク・カーン氏が勤めています。その背景には、サッチャー政権以来の‘金融ビッグ・バン政策’とそれに付随するロンドン市の積極的な‘開放政策’があったことは想像に難くありません。金融関連を含め外資系企業が犇めくようになれば、当然に外国人の採用も増加します。その結果、首都が外国人で占められてしまう事態を招きかねないのです。
第二に、‘海外マネーの呼び込み’という表現は、一般的には、国民にアピールすべき‘良い政策’として扱われています。しかしながら、近年、その風向きは変わってきており、海外資本の導入に二の足を踏む国も増えています。何故ならば、M&Aや株式取得等を介した無制限な海外資本の受け入れは、安全保障上のリスク上昇や技術流出、あるいは、経営権の支配をもたらすからです。アメリカでは、既に中国系企業による買収案が不許可となっていますし、親中色の強いドイツでも、同様の事例が散見されるようになりました。‘海外マネーの呼び込み’は、ひとつ間違えますと、‘自国経済の海外への切り売り’になる恐れがあるのです。因みに、小池知事は、現在、金融業は日本のGDPの5%に過ぎませんが、同政策により、イギリス並みの8から10%に上げたいとする意向を示しています。しかしながら、大手邦銀を含む金融機関が既に大規模な人員削減に動いているように、AIやITの導入に適した金融部門は雇用の拡大が期待できない分野であり、活発化した金融取引によるGDPの増加は、国内の雇用機会とは連動しないのです。(つづく)
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