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2018-09-25 00:00
(連載1)自由貿易主義の盲点
倉西 雅子
政治学者
自由貿易主義、あるいは、レッセ・フェール的グローバリズムは全ての参加国に利益をもたらすとする一種の‘予定調和説’は、今日に至るまで人々に固く信じられてきた‘ドグマ’です。しかしながら、絶対視されてきたこの‘ドグマ’さえ、国際レベルにおける著しい貿易不均衡と国内レベルにおける所得格差拡大という現実を目の前にして、漸く疑問が寄せられるに至っています。
自由貿易主義懐疑論の根拠の一つとして挙げられるのは、比較優位説を基礎とする同理論には規模の優位性に関する考察が欠如している点です。そして、この欠如は、現実の国際経済において、グローバル市場を独占しかねない中国企業の巨大化という忌々しき事態を招く要因としても働いています。
日経新聞朝刊(8月2日付け)にも、中国の競争当局による恣意的競争法の運営に関する記事が掲載されておりました。同国当局は、競争法を自国企業に有利な方向に戦略的に活用しており、外国企業に対しては、不利な判断が目立つのです。例えば半導体部門を見れば、最近では米クアルコムによるオランダNXPセミコンダクターズの買収が阻止されましたし、東芝メモリー売却に対して突然に不承認から許可に転じたのも、日本の産業、並びに、日系企業の弱体化という戦略的意図があったと指摘されています。すなわち、中国の独占禁止法の運用は、公平・公正な立場から市場の競争秩序を維持することを目的となしてはおらず、グローバル市場における中国企業の競争力強化の手段に過ぎないのです。
ところが、現状では、国際社会は、こうした中国の‘戦略的競争政策’を制御する有効な手段を持っていません。競争法は、EUを例外として国家レベルで国内法として施行されていますので、中国当局による恣意的競争法の運営はそのまま放置されているのです。しかも、規模の優位性の問題に照らして見れば、国家間の経済規模の違いは、13億の市場を擁する中国企業をさらに有利な立場に押し上げます。中小規模の国では国内シェア第一位の企業であっても、中国市場において独占的な地位にない劣位の中国企業に対してさえ、顧客数、資金力、人材、研究・技術開発力など、あらゆる面において太刀打ちするのが困難です。国境なきグローバリズムにあって、中国企業は、全世界からこれらを容易に調達できるのですから、中国企業の膨張を抑えるのは至難の業なのです。(つづく)
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