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2018-09-21 00:00
(連載1)経済の出口
緒方 林太郎
元衆議院議員
そろそろ、「大幅な金融緩和」を始めてから6年になります。これは、どう見ても無理筋の政策なのですが、これを真正面から批判する人は少ないです。理由は簡単でして、「短期的にはそれなりに成果が出ている(ように見える)から」です。あれだけ円安誘導をすると輸出ドライブが掛かりますので、それらの産業を中心に景気が持ち直したのが大きいでしょう。ただ、気を付けなくてはならないのは、経済において「ただのランチのようなものはない」という事です。例えば、ドル建ての日本の国内総生産(GDP)の規模は劇的に下がっています。また、大幅な金融緩和によって、今後、何らかのショックで金利が上がった時にも打てる金融政策が殆ど無いでしょうし、財政再建が進んでいない事から金利が上昇した時の利払い負担への脆弱性が高まっていますし、そもそも、日本国債の信頼性が少しずつ掘り崩されています。また、低金利に我々は慣れてしまったので気付きにくいですが、ゼロ金利とは国民の預金や金融機関に課税をして、国債の償還費に充てているのとほぼ同義です。
今の政策は「日本経済の耐久性に極限までチャレンジ」みたいなものでして、先人の築き上げた日本経済の財産を食い潰しながら、何とか短期的に体裁を整えているようにしか見えません。ただ、もうそのチャレンジも限界に到達しつつあります。パツンパツンに張り詰めたゴムのような状態だな、とあるコントを思い出しました。私は「大幅な金融緩和」を全面的に否定するつもりはありません。短期的に一息つくため、そういう政策を打つ可能性はあったでしょう。ただ、その間に生産性を上げ、潜在成長率を上げる事に全力を注ぐ必要がありました。結局、大幅な金融緩和のユーフォリアの中、それらの政策が進まず、今になって「生産性革命」とか言っています。さすがに「最初から『生産性革命』のための時間稼ぎをするという経済政策パッケージではなかったのか?」と言いたくなります。
あまり大きくは報じられないのですが、今年に入って新発の10年国債の売買不成立が7回も起きています。これまでに無かった事態です。私の眼には、国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを歴任したオリヴィエ・ブランシャールが数年前に鳴らした警告ととても被ります(小黒一正・法政大学教授の論稿「オリヴィエ・ブランシャール教授の日本財政への警鐘」(アゴラ、2016年05月21日。)と合わせて是非読んでいただきたい内容です。)。これまでは日本国債は金利が低くても買ってくれる国内の投資家が居ましたが、国債が国内で捌けなくなっていく時、スプレッドの要求が厳しい外国の投資家に買ってもらわなくてはならないという事態がひたひたと来ているような気がしてなりません。三菱東京UFJ銀行は2年前に国債入札の特別参加者資格を返上しています(なお、これは同行が国債入札をしないというわけではなく、特定の義務を負わないという事です。)。
それ以外にも、色々なショックで金利が跳ねる可能性はあります(その可能性が無いという事こそ正に「安全神話」です。)。その時が正念場になるでしょう。とても脆弱性が高いです。今、毎年借換債を含めて150~170兆円くらいの国債発行になりますが、これらの金利が2%になってしまうだけで、3~3.5兆円くらいの負担増です。数年、2%状態が続けばすぐに消費税7-8%分くらいの負担増になります。ブランシャール氏が言うように「政府から日銀に『ゼロ金利を維持してくれ』と電話が掛かってくる」事だって大いに考えられます。(つづく)
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