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2018-09-17 00:00
中国本土企業の発展の背後にある中国本土のダブルスタンダード戦略について
真田 幸光
大学教員
昨年、韓国の三星電子とLGディスプレーを抜き、液晶パネル業界の事実上の世界トップ企業となったのは、中国本土の京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)であります。BOEは、私の見るところ、明らかに中国本土政府系の軍需企業であり、1950年代から「774工場」とうコード名で真空管などを生産し、中国本土の人民解放軍に納入していたことで知られていたものであり、その後、1985年に北京市所属の国有企業として再編され、日本と合弁でブラウン管部品などを生産しましたが、実は産官連携の、中国本土得意のダブルスタンダードによって作られた企業と私は認識しています。そして、中国本土政府の背後の支援を基にBOEは韓国企業買収、これを契機として、液晶パネル事業に参入しました。収益拡大と情報産業と言う軍事産業関連拡大の両方に影響力を持てるとの認識から、中国本土政府のBOEに対する支援が強まりました。そこへ、2003年には、キャッシュフローが危機に直面したハイニックス半導体が液晶パネル部門のハイディスの売却を目指した際、BOEは3億8,000万米ドルでこれを買収しました。これを契機に、2005年には北京に第5世代の液晶パネル生産ラインを完成させ、合弁で徐々に技術を学んでいくというより、むしろ、買収することによって重要技術確保し、発展の基盤を作ったのであります。これも中国本土政府の発展戦略の得意技であり、だからこそ、最近は欧米で、「中国本土企業による企業買収に対する規制が強まっている。」とも言え、また、私は、「昨今の米国の対中経済制裁の背景」にはこうした、「中国本土政府のダブルスタンダードに基づく、いいとこ取りの発展に対する警戒」があるものと見ています。
ところでBOEの液晶パネル事業への挑戦は無謀な面が少なくなかったのですが、これは、中国本土政府の支援が支えとなっていたと見られます。例えば、ハイディスの韓国人技術者1人にBOEの従業員を約15人付け、液晶ディスプレーの基本から教えるほど、技術人材は絶対的に不足していたことから、当初、製品の歩留まり率は60%程度にしか過ぎず、当初は、年間数千億ウォンの赤字が積み上がりましたが、こうした赤字を支えたのもやはり中国本土政府の支援であり、経営危機を持ちこたえたのでありました。社会主義・共産主義国家のなせる技で、日本の民間企業であれば、企業再生を図るか、倒産の憂き目にあっていたかもしれない状況でありました。
しかし、中国本土政府の支援があり、BOEはこうした状況でも生産ラインの拡張を続け、先端産業の誘致を目指す中国本土政府と連携しました。その後2008年から2013年までに21兆ウォンを超える資金を借り入れ、四川省成都市、安フェイ省合肥市などに生産ライン6本を建設、2010年後半には量産に入りました。もともと、規模の経済性が働く、半導体業界にあって、BOEの量産開始が効果を上げ、競合企業を下回る単価で中国本土内需市場を席巻し、2012年には黒字転換、2014年には世界5位の液晶パネルメーカーとなり、今日に至っています。そして、最近では、BOEが当初困難にあった技術者確保も飛躍的に改善、人材確保面では、BOEは年間6,000~7,000人を新規採用出来るようになり、このうち60%が修士以上、しかも中国本土を代表する北京大、清華大など名門出身も数多くいるようになっていると報告されています。
中国本土政府の共産主義社会主義と資本主義のいいとこ取りのダブルスタンダードを背景とした発展は、世界一の人口を背景とした規模の経済性を利用しつつ、中国本土の発展を大いに支え、最近では、その中国本土が、「覇権主義的動き」を強め、私は危惧しています。中国本土には、「大国としての義のある行動」を取ってもらいたいものであります。
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