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2018-09-11 00:00
(連載1)リラ急落で中国に急接近するトルコ
六辻 彰二
横浜市立大学講師
アメリカが相手構わずふっかける貿易戦争は、中国にチャンスを与えるものかもしれない。8月10日にトルコ・リラが急落して以来、トルコ政府はロシアやイランだけでなく、中国との経済協力を模索している。アメリカが反米的な国を経済的に追い詰めるほど、それらは結束しやすくなり、中国の動向はそのカギを握ることになる。8月10日からのトルコ・リラ急落には、アメリカのゼロ金利政策の解除でドルが新興国から引き上げ始めたことや、独裁化の傾向を強めるトルコのエルドアン大統領が、7月に財政・金融の責任者に娘婿を据え、海外投資への規制を強化したことなど、いくつかの伏線がある。しかし、直接的なきっかけは、10日にアメリカ政府がトルコの製鉄・アルミニウム製品に対する関税を2倍に引き上げたことにあった。
トルコはNATO加盟国で冷戦時代からアメリカと同盟関係にあるが、近年の両国はいくつかの問題をめぐって対立してきた。エルドアン政権によるメディア規制などの人権侵害、シリア内戦でアメリカがクルド人を支援していること(クルド人はトルコ国内でも分離独立を要求しており、トルコ政府は彼らを「テロリスト」と呼んでいる)、2016年7月にトルコで発生したクーデタの首謀者とみられるフェトフッラー・ギュレン師がアメリカに亡命していることなどである。これらに加えて、最近では両国政府は、トルコ当局によってテロ容疑で自宅軟禁にされているアメリカ人牧師の解放をめぐって対立している。関税引き上げは、この背景のもとで行われた。つまり、この関税引き上げは、アメリカの貿易戦争の一環であると同時に、NATO加盟国でありながら反米的なトルコに対する制裁でもある。そのため、リラ急落後、エルドアン大統領は「アメリカが後ろから刺そうとしている」、「同盟関係が危機にある」とアメリカを批判。これと並行して、エルドアン大統領はアメリカとの取り引きを減らすことに言及している。
もともと、アメリカとの対立が徐々に深まっていたエルドアン大統領は、2016年12月段階で既にアメリカに代わって中国、ロシア、イランとの取り引きを増やす考えを明らかにしていたが、リラ急落の翌11日に再びこの考えを示した。中国はトルコと同様、関税引き上げの措置を受け、トランプ政権との貿易戦争に直面している。ロシアは2014年のクリミア危機以降、イランは5月のトランプ政権によるイラン核合意破棄以降、アメリカから経済制裁を受けている。エルドアン政権の方針は、これらとの取り引きを増やすことでトルコ経済を立て直すとともに、アメリカと対抗しようとするものといえる。これに関して、英紙テレグラフ(2018年8月13日電子版)は、トランプ政権が『制裁を受ける国の汚れた枢軸』を生むリスクを抱えていると指摘している。
では、中国はエルドアン大統領のラブコールをどうみているか。8月10日、中国の英語放送CGTNはエルドアン大統領の方針を詳細に伝えた。中国にとって、リラ急落に見舞われるトルコのラブコールに応えるメリットは小さくない。特にリラ急落は、金融面で中国が影響力を伸ばす転機となる。リラ急落直前の9日、中国銀行トルコ支社は初めて人民元で起債(パンダ債)していたが、リラが不安定になるほど、同様の動きは広がるとみられる。(つづく)
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