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2018-09-06 00:00
(連載3)憲法改正における防衛関連条項
佐藤 有一
軍事評論家
日本ではこれまで国民投票が行われたことはありません。地方自治体において住民投票が行われたことはありますが、投票結果に強制力が伴うものではありませんでした。国民投票の準備期間中の運動についての規制もほとんどありません。マスメディアでのPRや個別訪問も自由に行うことができます。国民投票法は憲法改正のための手続きを定めた法律ですが、ここで禁止されているのは公務員と教育者の地位を利用した運動だけです。事前の世論調査の結果が国民投票に影響を与えることも考えられますし、国会議員や官僚の不祥事があれば憲法改正とは関係ない事件であっても投票結果を左右するでしょう。候補者を選ぶ国政選挙とは異なり改正の賛否を選ぶのですから、投票を促す運動も国政選挙とは異なる様相を呈することでしょう。日本国民にとって経験のない国民投票は様々な予期しない混乱をもたらす恐れがあります。はじめての国民投票は「お試し国民投票」と揶揄される所以です。
このように国民投票は不確定要素があまりにも多く、国民の憲法改正に対する本当の意思が投票結果に正しく反映されるか疑問とする意見もあります。英国におけるEU離脱の国民投票ではEUを離脱することに決定しましたが、その後にEU離脱に伴う様々な問題が明らかになってくると、国民投票をしたことに対する疑問が英国国民の中に発生して混乱をきたしています。国民投票は最終的な国民の意思決定であり、その結果は大変な重要性を持っています。国民投票で思いもかけない結果が選択されてしまっても、それを覆すためには再度の国民投票によるしかありません。しかもそれが望むような結果になるとは限らないのです。国会における憲法改正の審査や本会議における議決のハードルが高いとしても、憲法改正に賛成する国会議員の比率を勘案すれば国会内における改正手順の見通しはたてられます。しかし国民投票の結果だけは予測ができません。国会で充分に議論された憲法改正原案が国民投票によって否決された場合、国の政治社会の混乱による損失は計り知れないものがあると思います。これを「憲法改正のリスク」と称して、憲法改正をせずに憲法の解釈によって同じ目的を達しようとする考え方もあるようです。しかし憲法の解釈を変更するたびに憲法違反の論争が起こるのは、国会における本質的な議論とは言えません。
防衛関連の憲法改正であれば日本の安全保障のために、現在あるいは将来発生しうる軍事的な脅威に対処する方策を、国内のみならず国際協調主義に基づいて国際社会で実現するための憲法改正でなければなりません。防衛関連の憲法改正の出発点は「日本の安全保障」とすべきです。それを無視した「平和主義」を出発点とすることは、現実に存在する日本周辺の軍事的脅威を見過ごす恐れがあります。憲法の基本原則である「平和主義」は大切な原則ですが、防衛関連の憲法改正に適用して出発点とするのはあまりにも危険であることを認識する必要があります。国の安全保障に関しては、一部の政党を除いて政党間の違いは少ないはずです。安全保障を確保するための憲法改正なのですから、党派の違いを乗り越えて実質的な審議をしてほしいものです。
最近の国会の議論は政党間の党利党略にかたよりすぎて、肝心な法案が審議されないまま放置される状態が見受けられます。同じ言葉の繰り返しになりますが、憲法改正が政党の利害得失や政局を有利に進めるためだけの政治行動であってはなりません。ましてや国民の人気取りを目的とした言葉の印象操作をしてはいけません。世論調査でも明らかなように、国民は日本の安全保障を確保するために憲法改正が必要であることを認識しています。したがって、憲法改正に無関心な政党あるいは国会で憲法改正の議論や憲法審査会での審査を妨害するような政党は、次第に国民の支持を失っていくことは確実と思います。(おわり)
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