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2018-08-08 00:00
(連載1)朝鮮戦争は‘米ソ代理戦争’という複雑化要因
倉西 雅子
政治学者
朝鮮戦争とは北朝鮮が起こした対韓侵略戦争であり、米軍を主力とする‘国連軍’は、この侵略を阻止するために闘った、とする見方は、最もシンプルな朝鮮戦争理解です。こうした国際社会の一般的な見解に対して、北朝鮮は内戦論を主張しており、両者の見解の溝は埋まっていません。見解が真っ向から対立する状況下にあって平和的な解決を希求するならば、一先ずは、両者が自らの行動の正当性を主張し得る国際裁判が最も適した方法となりましょう。
しかしながら、その一方で、冷戦期に発生した朝鮮戦争には、もう一つ、同問題を複雑にし、明快なる司法解決を阻害している要因があります。その要因とは、朝鮮戦争が、‘熱戦’と称されたように米ソを盟主とする東西陣営による代理戦争であったとする側面です。第二次世界大戦の末期には、独裁者スターリンが率いるソ連邦は、ナチス・ドイツからの‘解放’を大義名分として掲げつつ、軍事力、並びに、全世界に張り巡らした共産党の組織力を以って周辺諸国を社会・共産主義陣営に組み込んでゆきます。この行為に対し危機感を覚えた米英は、大戦末期にはソ連邦を連合国の一員、即ち、‘味方’ではなく、半ば‘敵国’と見なすに至っており、特に朝鮮半島においては、米ソが南北から占領地の確保を競う形となったのです。
こうして1948年には、韓国と北朝鮮の両国が独立国家として誕生しますが、南北は、それぞれアメリカとソ連邦を後ろ盾としたのです。南北両国が、米ソの事実上の‘傀儡国家’であるならば、朝鮮戦争の背景にも超大国の‘世界戦略’があったはずです。実際に、侵略を開始するに先立って、北朝鮮の金日成はソ連邦のスターリンに‘お伺い’を立てていますので、同国が、純粋な独立国家でなかったことは確かです。
仮に、スターリンが許可を与えなければ、朝鮮戦争は起きなかったことでしょう。ソ連邦は、社会・共産主義陣営の版図拡大のために朝鮮戦争を後押ししたのであり、ソ連欠席の内に安保理決議を成立させた国連の対応は、勢力圏の拡大を目指す東側陣営の拡張主義に対する西側諸国のリアクションであったことになります。そして、北朝鮮側の戦局の悪化を受けて開始された義勇兵派兵による中国の介入は、社会・共産主義諸国の間では、この時、暗黙の軍事同盟が成立していたことを示唆しているのです。(つづく)
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