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2018-08-02 00:00
(連載1)‘ユダヤ人’は他民族の自決権をも尊重を
倉西 雅子
政治学者
1948年5月14日、イギリスの委任統治領であったイスラエルは独立を宣言し、ディアスポラ以来、‘流浪の民’となっていた‘ユダヤ人’は、念願の祖国を持つに至りました。7月19日、そのイスラエルにおいて、同国を‘ユダヤ人’の国家と再定義する法案が国会で可決されたそうです。
ヨーロッパにあって、‘ユダヤ人’には長きにわたって迫害されてきた歴史があります。反ユダヤ主義はナチス政権下のドイツにおいて極致に達しますが、歴史を具に観察しますと、‘ユダヤ人’は専ら被害者であったわけではなく、選民意識の強さからか、異教徒、あるいは、異邦人の立場から一般の人々を苦しめた加害者としての側面もあります。しばしば債務者の人生を破綻させる金融業の独占的支配のみならず、世界大の奴隷売買や麻薬密売等にも関与しており、一般の人々から危険視されるだけの理由はあったようなのです。そして、今日、‘ユダヤ人’が批判される理由の一つは、他民族の民族自決主義に対する非寛容性です。この側面は、今般の法案成立にあってはアラブ語を公用語から外すといった国内的な排除作用として表面化しましたが、対外的、あるいは、国際的には、他の民族の枠組を融解させる方向に強力に作用しています。
‘流浪の民’であった故に、‘ユダヤ人’は、長きにわたる年月を費やして人的ネットワークを全世界に張り巡らしてきました。こうした世界大の民族・宗教的なネットワークを有するのは、唯一‘ユダヤ人’のみです(もっとも、‘ユダヤ人’は、その発祥からして混成民族であった可能性が高く、かつ、今日では、定住地での混血や改宗等を通して構成が多様化している…)。‘ユダヤ人’のみが、現実の歴史をも裏から動かし得る国境を越えた‘プラットフォーム’を保有しているのです。仮に、こうした‘ユダヤ人’のネットワークが民族的出自を同じくする人々による親睦的な組織であれば、あるいは、啓蒙思想等が内包する人類愛と結びついていた時代には、然したる問題は起きなかったかもしれません。ところが、そうとばかりは言えないようなのです。
世界大のネットワーク、並びに、金融業等で成した莫大な資金力を擁する故に、‘ユダヤ人’の影響力は絶大です。各国の世論を誘導し得るマスメディアの多くもユダヤ系です。その隠然たる組織力とマネーの力を以ってすれば、外交・安全保障政策や移民政策など、裏から各国の政治家をコントロールし、歴史を裏から動かすことは決して不可能ではありません。(つづく)
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