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2018-08-02 00:00
(連載2)「世界最大のごみ捨て場」中国の終焉
六辻 彰二
横浜市立大学講師
ごみの取り引きも一応「貿易」のカテゴリーに入るが、中国政府による輸入禁止は世界貿易機関(WTO)の手続きに沿ったもので、違法性もない。そのため、外国が中国政府の決定を覆すことは不可能だ。まして、さすがにどの国も「今まで通りごみを引き受けろ」とは言えない。そのため、中国に代わる「世界のごみ捨て場」として、ヴェトナム、タイ、マレーシアなどのごみ処理場が活況を呈している。
しかし、先述のように、東南アジアの多くの国自身が、中国にごみを輸出してきた。そのうえ、これらの国は中国よりはるかに面積が狭い。したがって、これらの国のごみ処理場が遅かれ早かれ一杯になることは、容易に想像できる。だとすれば、各国はこれまで以上にプラごみ削減に取り組まざるを得ない。この背景のもと、冒頭でとりあげたストローだけでなく、プラごみ全体を減らす取り組みも表面化している。オーストラリアでは7月1日、スーパーなどでプラスチックのレジ袋が廃止された。各国におけるプラごみ削減の動きは、環境への悪影響を中心に語られてきたが、実際にはプラごみで自国があふれ返ることへの危機感も背後にあるとみてよいだろう。
ところが、日本の反応はお世辞にも機敏といえない。例えば、プラスチック製ストローの業界では「プラスチック製ストロー廃止の動きは一部の外資に限られており、日本でこれが広がるかは疑問」という考え方が支配的だ。そこには、「欧米諸国ではプラスチック製ストローを埋め立てることが多いが、日本では焼却が中心であり、環境悪化につながっていない」といった主張がある。さらに、プラスチックに代わって欧米で使用され始めている紙製ストローの品質の問題をあげ、「いずれプラスチック製に回帰する可能性もある」という楽観的な意見すらある。
プラごみに限らず、日本では消費者の関心が高くないこともあり、関連業界の意見が環境対策やごみ対策を左右しやすい。その一例としては、家電があげられる。欧米諸国では、販売価格にリサイクル費用を上乗せして家電メーカー側に負担を求める前払い方式が主流だ。これに対して、日本の家電リサイクル法では、家電メーカーから前払い方式への反対が相次いだことから、廃棄段階で消費者が費用を負担する後払い方式が採用されている。後払い方式は家電の不法投棄の温床にもなっている。家電の例でそうだったように、現状の日本政府は関連業界や景気への影響から、プラごみ削減に熱心と言いにくい。環境白書(平成29年版)では「循環型社会の形成」が謳われ、海洋汚染の観点から海洋ごみ対策に取り組むことや、容器包装に限ったプラごみのリサイクル率の高さが紹介されているものの、プラごみ全体の削減や、まして「ごみ輸出」に関しては触れられていない。しかし、海外のごみ捨て場が限界に近づいているなか、プラごみを出し続けることは、いずれわが身に返ってくる問題でもある。言い換えると、日本のプラごみの始末をつけることは、他の誰でもなく日本自身にとっての急務なのである。(おわり)
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