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2018-07-30 00:00
韓国の現状について
真田 幸光
大学教員
韓国では、「雇用低迷に米中の貿易戦争という悪材料が重なり、消費者心理がこの1年2カ月で最も冷え込んでいる。」との認識が出ています。そして、更にまた、経済協力開発機構(OECD)の調査で、「OECD加盟25カ国のうち、韓国企業だけが今後の景気を悲観している。」との結果が出ていることを朝鮮日報では報じており、「簡単に言えば、北朝鮮問題で、得点を挙げている文政権ではあるが、経済運営には問題がある。」との声も韓国国内では出てきていることを示しています。もう少し、詳細に見ると、韓国の中央銀行である韓国銀行が発表した本年6月の消費者動向調査の結果では、「消費者心理指数が前月対比2.4ポイント低下し、105.5となった。 これは大統領選挙直前の昨年4月の100.8以降で最も低い数値である。」との結果が示されており、ビジネス界からは、「こうした消費者心理指数の推移は、経済状況が悪化したと考える消費者が増えたことを意味しており、景気先行き不透明である。」との声にもなっています。そして、その低下幅である2.4ポイント下落は2016年11月の6.4ポイント下落以降の1年7カ月で最高となっていることも指摘されています。
更に、2016年11月は朴前大統領の弾劾を控えており、海外ではトランプ米大統領が予想を覆して大統領選挙で勝利し、経済に不確実性と不安心理が広がっていた時期であり、今とは悪化の背景が明らかに違い、今回の悪化は国内の経済政策要因が強いとの批判が強まっています。これに対して、韓国銀行は、「最近発表した就業者数の増加幅がとても小さく、沈静化するとみられていた米中貿易紛争が再燃したことが消費者心理に悪影響を与えたと見られる。」とコメント、そして、5月の就業者数の増加幅は7万2,000人に留まり、2010年1月の1万人減以降のこの8年4カ月で最も少なかったとしていますが、大きな不安はないとしています。
しかし一方、冒頭で述べた通りOECDの加盟国では韓国の企業だけが悲観的な景気見通しを抱いており、OECDがまとめた5月の景況感指数(BCI)で韓国は98.74となり、対象25カ国で唯一、基準値の100を下回っています。韓国政府の対応を注目したいです。尚、文大統領の言動を見ていると、「南北融和の延長線上で、朝鮮半島、東北三省、シベリア、サハリンの北東アジア大開発が進展され、その中で、韓国経済も新たな発展の道を得られる。」との期待感を持っているように見られ、注視したいと思います。
また、こうした中、韓国の主要紙である朝鮮日報は、「ノーベル経済学賞の受賞者で米ニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマン氏は、ソウルで国民経済諮問会議の金広斗副議長と、“二極化”をテーマに特別対談を行った際に、“韓国は、労働集約度が高い産業構造のため、生産性が低下する中進国の罠に掛かっている。”との趣旨のコメントをしたとも報道しています。これは即ち、2006年に1人当たり国民総所得(GNI)が2万795米ドルを記録して以降、現在でも3万米ドルに達しない韓国経済に対する診断でもあると見られています。そして、クルーグマン教授は、1988~2011年に活発に進んだグローバル化で最も恩恵を受けた中国本土・インドなど新興国でも、経済成長で全世界の新興中間層が莫大な利益を得たが、貧しい国々は成長の恩恵を受けられず、先進国でも労働者階級は疎外されており、経済史的に最も立派な業績を上げたが、その裏には二極化といった暗い断面があるとの主旨のコメントもしています。一方、金広斗副議長は、「技術の進歩が加速する第4次産業革命の時代には、賃金格差がさらに拡大する可能性がある。二極化の深刻化で階層移動に対する希望が消えると、社会的対立が高まるのは避けられない。経済界は二極化と貧困の解消にどうやって寄与するかを考え、積極的に実践していく必要がある。」との主旨のコメントをしています。私は、私の韓国駐在の経験から、「韓国は、階級格差の問題から、社会不安が発生する可能性はあり、クルーグマン教授の韓国に対する指摘は韓国の将来を占う上で重要なものである。」と考えています。引き続き、韓国経済の現状をフォローしていきたいと思います。
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