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2018-07-27 00:00
(連載2)北朝鮮が日本国に要求する“過去の清算”とは?
倉西 雅子
政治学者
日韓請求権協定の実態とは、法的な解決と言うよりは、アメリカの仲介による政治的な妥協ですので、このモデルを北朝鮮にそのまま適用することはできないはずです。そして、北朝鮮がサンフランシスコ講和条約の締約国ではないにせよ、仮に国際社会における一般ルールに従って純粋に日朝両国間で朝鮮独立に際しての法的清算を行うならば、むしろ北朝鮮が、日本国に対してインフラ等の財産の対価を支払う立場にあります。また、‘植民地支配’の償いについても国際法上に根拠はなく、欧米諸国から独立を果たしたアジア・アフリカ諸国にあっても、‘過去の清算’として賠償金が支払われた事例はないのです。これらの植民地では、毎年、朝鮮半島に財政移転を行った日本国とは逆に、植民地から本国への富の移転が行われていたにも拘わらず…。
さらに、もう一つ、指摘する点があるとすれば、かの「日朝平壌宣言」では、日韓請求権協定と同様に日朝双方の国および国民の請求権を相互放棄している点です。請求権が相互に消滅する以上、‘過去の清算’はあり得ませんので、北朝鮮の清算要求は、北朝鮮が同宣言を空文と見なしている証ともなりましょう。
何れにしましても、北朝鮮は、日本国に対して財産上の請求を成し得る歴史的根拠も法的根拠も有してはいません。あるいは、独立を失った精神的な苦痛に対する償いを根拠とするかもしれませんが(朝鮮は、歴代中華王朝の冊封体制における属国でもあったので、中国に対しても請求することに…)、ウィルソン米大統領の「十四か条の平和原則(1918年1月8日)」の提唱により民族自決権が確立するのは第一次世界大戦後のことです。
一方、日本国による朝鮮半島の統治が開始されるのは、同原則成立以前の1910年なのです(もちろん、民族自決の原則が確立することは、人類の道徳・倫理的向上…)。日本国政府は、北朝鮮の主張を鵜呑みにしてはならず、不当な要求に対しては正当なる根拠を挙げて拒否すべきではないでしょうか。(おわり)
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