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2018-07-17 00:00
(連載2)制裁の困難さ
緒方 林太郎
元衆議院議員
(2)迂回されると捕捉されない:古川氏の本にもよく出て来ますが、直接の輸出入ではなく、第三国経由になると極めて捕捉しにくいです。本来、安保理決議は加盟国すべてに義務として課せられるので、すべての国がパーフェクトに履行していれば、理論上は世界中何処でも捕捉され、そして輸出入や金融取引が止まるという事になるはずです。しかし、世界には国連安保理制裁をパーフェクトにやる能力のある国、やる意思のある国はむしろ少数ですので、穴は世界中にあります。そして、複数の国を迂回されると、国連のネットワークを以てしてももう捕捉出来ないと思います。更に日本の独自制裁になると、第三国経由の迂回は殆ど追えません。なので、北朝鮮のミサイル等に「え?」と思うような日本製品が使われていたりするのです。
(3)汎用品は判断が難しい:ピンと来ないかもしれませんが、世の中には日常生活用品としても使え、かつ、武器の部品にもなるものというのがたくさんあります。秋葉原の電気街に行けば、そんなものは幾らでも見つかるでしょう。総論として「核兵器関連物資」、「ミサイル関連物資」といってもそれが何なのかはかなり争いがあります。かつて、テロ条約の交渉で本件で大揉めしました。「大量破壊兵器の製造、運搬等に相当程度貢献する」みたいな事を要件にしようと提案したのですが、ある国の代表から「そんなもの、どうやって証明するのだ。」と徹底的にやられました。「大量破壊兵器を製造、運搬等する意図」を要件にしたとしても、その証明も結構大変です。非常に極端なケースを言うと、ネジを持っている人間に「このネジはピストル製造に使えるものじゃないか。しかも、おまえはその意図を持っているだろう。」と言って尋問するようなものです。
(4)そもそもやる気のない国、やる能力のない国がかなりある:日本では国連安保理制裁はきちんと国内法制に落とし込みます(古川氏は不十分だと言っています。)。安保理制裁をパラグラフ毎に精査して、表現振りに合わせて、例えば外為法告示等を行います。そして、税関、海保、自衛隊、金融機関等、色々な部局がそれで動きます。しかし、複雑な安保理制裁をそこまで国内で周知徹底出来る国はとても少ないです。 ヒューマンリソースに限界のある国になると、そもそも現場で安保理制裁の存在を知らない事は例外的な事ではありません。特にアフリカの国には穴が多いですね。しかも、北朝鮮と仲の良い国が結構あります。更には既に北朝鮮とビジネス関係が構築されていて、制裁逃れによるビジネス継続をしようとする国がかなり居るのです。こういう国は確信犯なので、更に性質が悪いです。
長々と書きましたが、別に「きちんとやれない言い訳」をしたかったわけではありません。こういう困難がある中、政府には少しでも穴を塞ぐ不断の努力をしてほしいと思います。(おわり)
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