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2018-07-05 00:00
(連載1)非核化費用を日本はどう捻出するか
中村 仁
元全国紙記者
米朝首脳会談でトランプ大統領と金委員長が、朝鮮半島の非核化を確認するとの共同声明を発表しました。非核化が本当に実現するのか評価が割れています。実現できなければ、膨大な非核化費用を日韓が引き受ける必要はなくなります。一方、安倍政権が本気で非核化を実現したいと思っているのなら、財源確保のために、増税の覚悟までしておくことが必要です。財政状況は先進国で最悪ですから、安易に国債増発に頼るわけにはいきません。
消費税の引き上げは使途を社会保障関連に限っていますので、北朝鮮関連に使うのは筋が違います。考えられうるとすれば、金融資産課税の強化でしょうか。源泉分離課税をやめ、総合課税に移行することです。株高で家計の金融資産は昨年度1829兆円に達しました。家計の株所有は前年度比で11%も増えました。主に富裕層が潤っているので、狙うとすれば、ここでしょう。北朝鮮対策を強調し、高い支持率を維持してきたのですから、安倍政権は本気になって、財源を探しておくべきでしょう。
非核化にいくらの費用がかかるのか。北朝鮮が保有する核兵器、核物質、関連施設か査察で調べてみないと、計算できません。だから、政府関係者、核の専門家もほとんど何もしゃべっていません。米国のシンクタンクの一説によると、200兆円とか。金額はともかく、膨大な規模になることは間違いなさそうです。日韓が主に負担するとなれば、比率をめぐり両国が対立するタネがまた増えます。記者会見でトランプ大統領は、「韓国と日本が大規模な支援をするだろう。われわれが支援する必要はない。米国は多くの場所で多額の支払をしている。隣国の韓国と日本が北朝鮮を支援する」と、いってのけました。「えっ」と、驚愕した人は多いでしょう。次に「事前にそんな約束ができているのか」ですね。「トランプだから事前の打ち合わせなんかしていない」と、考えるしかないでしょう。
日韓が非核化の最大の受益国と、見ているのでしょうか。米本土に届く大陸間弾道核ミサイルが開発されたとのことから、米国が北の非核化に本気で取り組みだした。これが今回の米朝会談のきっかけとすれば、最大受益国は米国であるはずです。その米国が費用を日韓に押し付けるのは筋が通りません。もっと驚いたのは安倍首相の発言です。「核の脅威がなくなることによって、平和の恩恵を被る日本が費用を負担するのは当然だ」と、気前のいい発言です。いったい、いくらかかるか、10兆か100兆円の単位か、考えた上での発言でしょうか。(つづく)
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