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2018-06-23 00:00
(連載2)やはり、日本にも「ネウボラ」が必要だ
長島 昭久
衆議院議員/元防衛副大臣
もう一つ憂慮すべき数字が「20万人」である。前述の3歳児健診を終えて小学校に入学するまでの3-5歳児のうちで、幼稚園にも保育園にも行っていない子どもがじつに20万人もいるというのだ。3-5歳児の人口は約316万人だから、約16%にも上る。愕然とする数字だ。この数字は、子どもの貧困とじつは合致する。いま貧困の連鎖が問題となっているが、じつは虐待も連鎖しているという。貧困と家庭内虐待は連関しているのかもしれない。
したがって、児童虐待は、単に児童相談所を強化すればいいという話では済まないことが分かる。もちろん、児相の拡充は最低限の対応として予算配分を含め可及的速やかに行わなければならない。警察、医療機関、民生・児童委員、学校や幼稚園、保育園など関係機関の連携もより緊密にしなければならない。さらに、場合によっては親権停止まで含めた虐待対応のルールの明確化も急ぐべきだ。
しかし、より根本的には、自らの子どもを虐待してしまう親(保護者)を何とかしなければならない。その点で、東京若手議員の会の児童虐待防止プロジェクトチームによる小池百合子東京都知事への緊急提言に書かれているように、保護者が子どもを虐待してしまう背景には、「社会的孤立、経済的貧困、保護者や子どもの疾患、保護者が過去に虐待を受けた経験など様々な要因があり、児童虐待は保護者の『SOS』でもある」という指摘は重い。つまり、児童虐待を防止するためには、子どもだけでなく保護者も含めその家庭ごとケアをしてあげなければならないのだ。とくに、「三つ子の魂百まで」といわれるが、就学前の0-5歳の時期は人間形成にとって死活的ともいえる。この時期に、人間の脳が形づくられ、心の在りようが決まり、基礎的な運動能力が身につくといわれているからだ。だから、子どもにとって、0歳から5歳が最大限のケアを要する時期なのである。
その子ども達にとって最も大切な期間を手厚くサポートできる仕組み。それが、フィンランドの「ネウボラ」(妊娠期から出産、子供の就学前までの間、母子とその家族を支援する目的で、地方自治体が設置、運営する拠点。また、出産・子育て支援制度)だ。私は、真の児童虐待防止策として、日本にも本格的に「ネウボラ」の導入を図るべきだと改めて提唱したい。3年前に各自治体に開設が(努力)義務付けられるようになった「母子健康包括支援センター」は、ネウボラ類似施設として期待されたが、質量も貧弱だし、何よりも子育て家庭支援の根本的な哲学や理念が日本社会全体で共有されているとはいいがたい。この際、妊娠期から小学校へ入学するまでの6-7年間を切れ目なく各家庭を丸ごとサポートする「日本版ネウボラ」を創設しようではないか。人口600万人のフィンランドでは、児童虐待による死亡件数は、年間0.3人だという。つまり、3年に一人なのだ。彼我の差は歴然。彼我の仕組みや制度の差も歴然。私は、子ども達の「未来保障」のために、日本版ネウボラの全国展開を予算措置も含め国家目標として掲げ、政府に対し決断と実行を迫っていく。(おわり)
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