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2018-06-05 00:00
中国による5G日中共有提案に警戒を
倉西 雅子
政治学者
情報・通信技術が急速に発展した今日、国家は、自国の領土、領海、領空といった排他的な地理的範囲としての領域だけを守備していれば事済む時代ではなくなりました。人々がそれとは気が付かない内に、別の形態での空間支配の魔の手が忍び寄っているかもしれないからです。先日も、日中韓3カ国の情報通信相会合に先立って、中国は、第5世代移動通信方式(5G)について、日中間における一部共有を提案してきたと報じられています。提案を受けた野田聖子総務相は、日本国側の技術的協力を以って応じたそうですが、仮に、この案が実現するとしますと、以下のようにリスクがあります。
第1に、5G技術の分野において広域的な‘日中スタンダード’が確立するとしますと、当然に、5G関連の製品の製造は、主として日中企業に偏ります。となりますと、同市場にあっては、スケール・メリットで常に劣位となる日本企業に勝ち目はなく、5G市場は、中国製品によって占められる可能性があります。これらの製品が複数の中国企業によって製造される場合には、日本国の独占禁止法を以って阻止することもできません。第2に、5Gについては、各国・地域において取りまとめ役を担う標準化団体が設立されているそうです。仮に、日中間で技術協力を行うとしますと、両国の標準化団体、即ち、日本国の5GMFと中国のIMT-2020 5GPGを統合するか、あるいは、日中合同団体を設立する必要があります。こうした団体が設立されますと、日本国は、5Gに関する独自技術を開発することは困難となりますし、中国への技術情報の漏洩、あるいは、中国技術の採用を強要されるリスクもあります。第3に指摘し得る点は、5Gという小さな分野での‘共有’でありながら、それが、リスクに満ちた日中のサイバー空間の共有、否、中国支配へのステップとなりかねないことです。EUに見られるように、国境を越えた広域的な技術や規格の標準化は市場統合の特徴でもあります。EUのケースでは、加盟国間における価値観の共有があり、また、その大半がNATO加盟国ですので安全保障上の運命共同体です。一方、日中の場合には、中国は非民主的な独裁国家であることに加えて、防衛や安全保障において対立関係にあります。政治的対立を抱える日中におけるサイバー空間の共有が如何に危険であるかは、誰もがすぐにでも理解できるはずです。5Gの共有化によって、機密情報を含む日本側の様々な情報が、中国側に易々と渡ってしまうことになる可能性が高いと言えるでしょう。
資源取引等を介して中国との経済的な結びつきを強めてきたオーストラリアでは、度重なる中国による内政干渉に嫌気がさし、目下、中国警戒論が吹き荒れているそうです。アメリカによる中国ZTNへの制裁の真の理由は、貿易収支の不均衡是正と言うよりも、同社の製品を介した“スパイ”活動の警戒にあるとも指摘されており、対中警戒感は、中国の露骨な覇権主義に起因する抗しがたい政治的トレンドとなっております。こうした中、一部であれ、日中間で5Gを共有するとなりますと、日中のみがグローバル・スタンダードから脱落し(仮に、他の国や地域が5G技術の統一を図った場合…)、日本国は、何時の間にか、中国経済圏に組み込まれる事態に陥るかもしれません。
通信網の把握を通した中国による日本国の空間支配の可能性が否定できない以上、警戒感が薄すぎる日本国政府の対応に、多くの国民が不安に駆られることでしょう(日本国政府は、中国に対して日本国を明け渡すのではないか…)。しかも、5Gが使用されるようになると脳腫瘍が増加するとの指摘もありますので、まずもって、その安全性を検証すべきなのではないかと思うのです。
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