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2018-05-28 00:00
中国モデルの「IT革命」は中国限定では
倉西 雅子
政治学者
5月23日のダイアモンド・オンラインに「中国で「IT革命」が進んでいる3つの理由」と題する興味深い記事が掲載されておりました。この記事を読みますと、他国が‘中国モデル’を採用するのは、大変、難しいように思えます。同記事の分析に依れば、中国をして「IT革命」を躍進させた主たる要因は、(1)割り切り・切り捨て的な発想、(2)端末としてのスマホ+個人ID+銀行口座のリンケージ、(3)14億人の巨大市場を背景とした巨額資金の流入の3者なそうです。そのさらに奥には、習近平国家主席を頂点とする一党独裁体制における、強引とも言える国家戦略が潜んでいることは言うまでもなく、「IT革命」も、同体制を支える国家プロジェクトしての性格を帯びています。
中国の目を見張るような躍進を前にして、「中国モデル」が全世界に広がるとの観測もありますが、これらの3つの要因を見る限り、このモデルは、中国限定のように思えます。何故ならば、3つの要因の何れもが、共産党中国という国家固有であるからです。第一に、(1)の割り切りや切り捨て的な発想は、中国人の実利的な国民性もありますが、共産革命によって一党独裁体制を樹立した同国との間に高い親和性を見出すことができます。共産主義では、自らが“過去の悪しき残滓”と認定したあらゆるものを廃絶する、あるいは、消滅させることには躊躇しませんし、むしろ、歴史や過去の否定を肯定的に捉えています。保守派のみならず、弱者への配慮を訴える勢力が存在する自由主義国では到底不可能な割り切りや切り捨てができるのも、中国の国柄によります。第二に、中国が実現した(2)のリンケージも、中国共産党による国民の徹底的な監視・管理という政治目的の下で推進されています。否、経済的利便性よりも、むしろ、政治的な有用性の方が、同システムが全国規模で敷かれた真の理由かもしれません。中国では、「物乞いをする人間ですらスマホを所持」しており、スマホを持たない自由がない、といっても過言ではないのです。また、様々な特典を提供することで、重要な個人情報を入力させているとも指摘されていますが、自由主義国であれば、個人情報保護の観点から反発や抵抗を受けることとなりましょう。
そして、14億の巨大市場を背景とした巨額資金の流入も、中国ならではです。インドを除いては、中国に匹敵する人口規模を有する国はありません。しかも、中国では、政府の後援の下で、‘ネット業界の巨人’とも称される百度、アリババ、テンセントの3社が、海外資本をも含む潤沢な資金力を発揮して新興企業を次から次へと買収し、プラットフォーム型の独占と経済支配に邁進しているのです。
以上に述べたように、3つの要因が中国のみが揃えることができるとしますと、他の諸国がこのモデルを真似しようとしても、真似ができません。むしろ、目下、議論すべきは、中国モデルを自国に導入すべきか否かではなく、拡張する中国中心の経済圏に自国が飲み込まれる危機的事態の回避ではないかと思うのです。
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