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2018-05-18 00:00
(連載2)中国による一帯一路構想擁護論の詭弁
倉西 雅子
政治学者
正当化理念の登場によって、一帯一路構想は中国の経済戦略と外交政策が‘有機的’に結合した“経済外交のプラットフォーム”へと転じ、この点について氏は、「経済外交とは、簡潔に言えば、経済のための外交、あるいは外交のための経済…」と述べています。言い換えますと、政治が経済に優先し、「最終的に中国の平和的台頭と(中華)民族の復興に寄与する必要がある。」としているのです。ここでも、中国の露骨なまでの自国中心主義が表明されております。同構想は、“貿易のグローバル化と投資の自由化を促進する新しい手段”とも説明していますが、このメリットも、中国の輸出市場のグローバル大での拡大と人民元圏の形成と読み替えれば、徹頭徹尾、自国優先という意味では主張は一貫しています。
ここまで読み進めると、先述した(4)中核理念としての「義利観」や、(5)運命共同体を特徴とする発展主導型の地域経済協力メカニズムの意味もおぼろげながら輪郭を表してきます。自由貿易主義の旗手を自認する中国自身でさえ、予定調和的にウィンウィン関係となる古典的な自由貿易理論を信じてはおらず、一帯一路にあっても、沿線国との間の貿易不均衡や貿易摩擦、並びに、運命共同体を名目とした中国による政治的介入に対する反発が起きることを想定しているのでしょう。オンライン記事のタイトルにも“最も重要なのは、正しい「義利観」に則って展開すること”とする副題が添えられていますが、「義利観」とは、こうした問題を解決する鍵として準備されているのです。
ところが、李院長に依ればこの用語の学術的な定説はないというのです。それでは、誰がどのように“正しい「義利観」”を判断するのかと申しますと、それは、‘政府’であるとしています(おそらく政府=中国政府=中国共産党=習近平国家主席では…)。李院長は、一帯一路構想の外部経済効果(中国以外の諸国の利益…)の重要性を説いていますが、それが沿線国に利益を分け与えること、即ち、中国が利益の配分権を握る事であれば、これぞ、まさに配分を主たる国家機能とする共産主義的体制に他なりません。
以上に述べたように、李院長の論考は、一帯一路構想の成否と正当性を、‘正しい「義利観」’という概念を持ち出した時点で、自らの正体を暴露してしまった感があります。詭弁に満ちた一帯一路擁護論は、結局は、国際社会や沿線諸国の懸念を払拭するどころか、むしろ、中国の飽くなき野望に対する警戒心を高めることとなるのではないでしょうか。(おわり)
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