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2018-05-17 00:00
(連載1)中国による一帯一路構想擁護論の詭弁
倉西 雅子
政治学者
最近、頓に一帯一路構想に対する風当たりが強くなったためか、中国は、同構想の擁護に躍起になっているようです。5月7日付け日経ビジネスのオンライン版で「一帯一路は中国が世界に提供する公共財だ」と題する中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院院長である李向陽氏の論考が掲載されておりました。
中国としては、学術的な立場からの擁護論であれば、国際社会からの批判をスマート、かつ、知的な高みから躱せると考えたのでしょう。しかしながら、この一文、読めば読むほど、その詭弁ぶりに唖然とさせられます。読者を迷路に誘い込んで自らが設けた出口からしか出られないようにする書き方は、中国の御用学者に共通した特徴です。
さて、李院長によれば、国際社会に拡がっている「中国版マーシャル・プラン」、「新植民地主義」、「新時代の朝貢システム」といった批判的見解の多くは誤解であり、一帯一路構想とは、(1)開放性(特に開発途上国が参加…)(2)インフラ整備による相互連結(3)多元的協力メカニズム(相手国によって協力目的を変える…)(4)中核理念としての「義利観」、(5)運命共同体を特徴とする発展主導型の地域経済協力メカニズムだそうです。しかしながら、(2)のインフラ整備については、軍事的目的であれ、政治的目的であれ、一先ずは実態と一致しているとしても、(1)については中国のみを起点とし、かつ、先進国を暗に排除している点で閉鎖的ですし、中国市場の閉鎖性は米中貿易戦争の経緯からも明らかです。また、(3)に関しても、相手国によって協力分野を変えるのは凡そ全ての諸国に見られる経済戦略ですので、特に新奇性はありません。(4)と(5)に至っては、実質的に、中国による政治的介入を意味することにおいて、一帯一路警戒論をむしろ裏付けているのです。
ここで、李院長は、中国の経済外交の変遷に話を転じています。同氏は、一帯一路構想の発端が、自国内における東・南部沿岸地域と中・西部内陸地域との開放レベルの差に基づく後者の経済成長の遅れであったと説明し、同構想は、国内問題の解決のために発案されたと述べています。いわば沿線国の利益は二の次であったわけですが、この自国中心主義を解消すべく強調されたのが、2013年に中国指導部が開催した周辺外交活動座談会において習近平国家主席によって提示された周辺外交戦略の理念、「親・誠・恵・容」です(李院長は習主席に阿り、その功績として讃えたかったのでは…)。そして、これらの理念を実現するためにこそ、“新しいプラットフォーム”の構築が必要であると説明しているのです。理念を後付けするこの逆立ちした論理展開には、たとえ“中国の、中国による、中国のための構想”であっても、その理念が沿線国に受け入れられれば歓迎されるはず、とする傲慢な意識が窺えます。(つづく)
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