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2018-04-25 00:00
太平洋を包囲し始めた中国
倉西 雅子
政治学者
北朝鮮危機やシリア問題に国際社会の関心が集中している間、中国による南シナ海の軍事拠点化は完了間近の段階に達しているそうです。一帯一路構想を国家戦略として掲げる中国の勢いは止まらず、南太平洋のバヌアツとの間で軍事拠点建設に関する協議が開始されたとも報じられています。世界地図を眺めますと、中国の海洋進出の戦略は一目瞭然です。南シナ海に歩を進めた中国が、次なる目標として、太平洋へと向かう東方向に進路を定めたことは疑い得ません。しかも、バヌアツは南太平洋に位置するのみならず、軍事同盟関係にあるアメリカとオーストラリアとの連携を分断する地政学上の要所でもあります。米豪関係に楔を打ち込むことができれば、全世界的な海洋支配を目論む中国にとりましては(アフリカでは既にジブチに軍事拠点を確保…)、これ程好都合な協定はないのです。
1980年7月30日に英仏共同統治から独立したバヌアツは、現在、人口24万人余りに過ぎず、GDP(PPP)も10億ドルで世界ランキングにあっては170位台で推移しています。潤沢なチャイナ・マネーをもってすれば、同国が易々と“籠絡”されることはあり得る事態であり、実際に、中国から多額のインフラ開発資金が流入しているそうです。そして、この一件から、中国は、国際社会に対して以下のような変化、否、脅威をもたらしているように思えます。
それは、第1に、中国は、最早、太平洋への進出に際して、アメリカの承認を求めていないと言う点です。かつて、中国の習近平国家主席は、アメリカのオバマ前大統領に対して太平洋米中二分論を持ちかけました。太平洋には、中国を受け入れるに十分な広さがある、と…。しかしながら、今般の中国の行動を見ますと、バヌアツとの協定締結に先立って米中合意を模索した形跡は現状ではみられず、実力主義に徹しているのです。乃ち、共産革命よろしく、自らの目標達成には実行あるのみであり、“中国の夢”を力でもぎ取る意欲を見せつけているのです。第2の点は、中国の海洋進出の基本的な戦略は、拠点獲得型であることです。バヌアツの対中接近は、旧宗主国であるイギリスやフランスの影響は薄れ、アメリカの意向さえ考慮することなく、同国が独自の対外政策を展開している現状を示しています。このことは、全世界を見渡して要所となりえる国に拠点を設けることで海洋支配のネットワークを構築したい中国にとりましては、最適環境とも言えます。狙いを定めた国に集中的な投資を行い、親中国家に鞍替えさせればよいのですから。国際法に基づく既存の海洋秩序は、今やチャイナ・マネーによって蝕まれつつあるのです。以上の2点から推測し得る第3の点は、中国の太平洋進出は、太平洋を南方から囲い込む形で進められる可能性です。これまで、同国の太平洋進出に対しては、台湾から東シナ海、並びに、日本列島全域を押さえていれば、同ラインが天然の防壁となって阻止できると考えられてきました。しかしながら、今日の中国は、日本列島のラインを迂回し、南シナ海・南太平洋のラインから北方に向けて、サラミ作戦の如く、太平洋への進出ルートを確保する動きを見せているのです。
今後、中国は、南太平洋から北太平洋へと徐々に勢力圏を広げるのでしょうが、この行動が続けば、当然に、近い将来、対米関係において決定的な局面を迎えることでしょう。中国の海洋進出が新たな段階に至った今日、日本国への影響も重大であり、日米同盟、並びに、国際社会は、中国による海洋支配という脅威に対応し得る態勢の整備を急ぐべきなのではないかと思うのです。
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