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2018-04-19 00:00
(連載1)自由放任のネットテレビの公共性
中村 仁
元全国紙記者
安倍政権が検討している放送事業の見直しに対し、テレビ局、親会社にあたる新聞社から猛烈な批判が巻き起こっています。論点が多岐にわたり、何を重視するかはそれぞれの利害で異なります。今後、放送と通信の垣根がなくなるといっても、放送法の第一条の「公共の福祉(利益の意味)に適合するように規律し、その健全な発展を図る」という精神をどう継続させるかを私は重視します。テレビ、新聞側の反論は新聞紙面などで知ることできるのに対し、放送業務に参入したいネット事業者が「公共の福祉」、「善良な風俗を害しない」、「事実を曲げない」などをどう考えているのか、考えていくのか、もっと知りたいですね。
放送業務と通信事業が一体となった新しい法律、新しい事業が生まれてくる、発展していくとしても、放送業務の社会的責任、公共性を自覚することは今後も変えてはいけないと思います。ネットの世界は、情報の広場、雑踏というか、情報の群衆のようなものでしょう。伝統的なメディア、政府や民間一般の機関などが発信源になっているものもあれば、群衆の流れのようにとらえどころがないものもあります。従ってネット全体に政府規制、法律的な規制をかけることは物理的に不可能です。ただし、電波を使った放送事業は公共財です。利害関係者が集まって方向性を決めるのでなく、利用者、視聴者の考え方を重視すべきでしょう。
見直しの原案にある「民放の放送設備部門と番組制作部門を分離」が実現できれば、ネット事業者は自分たちの番組(ソフト、コンテンツ)を「放送設備会社」の設備を借りて社会に送ることができるようになります。電力事業における発電(番組)と送電(放送設備)の分離に似た姿でしょうか。ここに新規参入したネット事業者には社会的責任、公共性を守る責任が生じるのだと思います。「これからのネット時代は規制はそぐわない」ではすまされません。
すでに「Abema TV」のように、地上波テレビと同じように、ニュース、ドラマ、アニメ、バラエティなどの番組を見られるネットテレビが存在します。地上波の設備を借りることができるようになれば、もっと事業を拡大できると考えているのでしょう。現在の民放テレビの番組はどの局も似たり寄ったりで、同じタレントがいくつもの局の番組に登場し、同じようなことを言う。飽きますね。民放の番組作成力が落ちていますから、新しいアイディアを持ったネット事業者が参入すれば、活性化するし、テレビ離れが進む若い世代を引き付けることができるかもしれません。既得権を守ってきた垣根を取り払う効果はあるでしょう。(つづく)
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