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2018-04-19 00:00
(連載2)世界秩序の枢軸のユーラシア回帰は何をもたらすか
宇山 智彦
北海道大学教授
今日の権威主義体制はかなり洗練されており、20世紀の粗野で暴力的な権威主義体制とは性質を異にしています。ある程度ガバナンスも高め、それぞれの国民の間で実際にかなり人気があります。そしてさまざまな国の権威主義的指導者は、互いの経験を学び合い、協力し合っています。特に中国は、開発途上国の独裁的指導者にとって、魅力的なモデルとなっています。政治的な自由化・民主化をしなくても経済発展が可能であることを示しているからです。中国はまた、途上国に対する投資と経済的援助を極めて活発に、しかも民主諸国が作ったルールに縛られずに行っています。このような状況は、中国とロシアが国内の権威主義体制を国際政治のアセット、資産として使うことを可能にしています。
第3に、大国間の競争の激化はユーラシアの小国にリスクとチャンスの両方を与えています。一般に大国間の競争はより小さな国の主権を損なう可能性があります。クリミアを併合することによって、ロシアは大国がより小さい国の領土を奪うという危険な前例を作りました。同時に大国間の競争は、そこから利益を得ようとする小国にとっての交渉、バーゲニングの余地を増やす可能性があります。例えば東南アジアや中央アジアの各国は、中国、日本、韓国、ロシア、欧米諸国などからの援助や投資のオファーを天秤にかけることができます。いずれにしても、ユーラシアにおける国際関係は、国力の違いを問わない平等なパートナーシップという理想からますます遠ざかっています。中国は「国際関係の民主化」を主張していますが、これは実際には、中国とアメリカの関係を対等なものにせよということを意味しており、他の小国と中国の関係を対等なものにするという意味ではありません。国連を根本的に改革するなど、新たなグローバル・メカニズムを確立しなければ、大国と小国の間の平等な関係は保証できないでしょう。
言うまでもなく、世界政治が権威主義と大国間競争に傾いていく現在の流れがいつまで続くかは誰も予測できません。短命で終わったり、方向を変えたりするかもしれませんし、長く続くかもしれません。日本では、「既存の世界秩序」、すなわち米国中心の世界秩序を維持することが重要だと考える傾向がありますが、もしもアメリカ自体が予測不能で攻撃的な国になったら、その秩序を守ることにどういう意味があるのでしょうか。また、中国を封じ込めよという意見も時に聞かれますが、覇権の歴史が教えているのは、台頭する勢力を無理に封じ込める試みは、侵略者に対する無分別な宥和政策と同じくらい危険になり得るものであり、しばしば悲惨な戦争につながるということです。
ですから重要なのは、大国間の競争を煽るのではなく、諸大国の攻撃性を減らし、平和的な共存を保つことです。そして、特に強調したいのですが、自由民主主義国家が世界の指導者たり続けなければならないということを証明するためには、自由民主主義国家のほうが、権威主義国家よりも発展途上国を助け民主的国際秩序を構築する能力があるということを示さなければなりません。武力よりも実例で示す、模範の力が重要なのです。(おわり)
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