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2018-02-22 00:00
(連載1)核規制と銃規制から見る対北政策の優先順位
倉西 雅子
政治学者
アメリカでは、無差別殺人を目的とした銃乱射事件が起きる度に、銃規制の問題が浮上しては現実主義者の反論を受けて下火となります。幾度となくこの状況が繰り返されてきたのですが、国際社会における核規制もまた、同様の問題を含んでいます。そしてこの共通性は、対北政策の優先順位を考える上でも重要な判断材料ともなるように思えます。
銃の保有や売買を完全に禁止しようとする規制派の人々は、“銃を保有する人々がこの世からいなくなれば、こうした凄惨な事件は起きなくなる”と単純に考える理想主義的な思想の持ち主です。いわば、性善説を信奉する人々なのですが、これらの第1の類型の人々には、“世の中には犯罪者となり得る悪人も存在する”という事実に関する認識の欠落があります。善人と悪人の混在は既に脳科学から証明されていますので、悪人の存在は、規制派の人々の理想を打ち砕いてしまうのです。国際社会においては、核兵器禁止条約を推進している人々こそ、まさにこの理想主義的規制論者の立場にあります。
しかしながら、現実を直視すれば悪人が存在していますので、仮に、規制派の人々の主張に従って銃の保持や売買を禁止するならば、銃を隠し持っている悪人による銃使用に即応し得る警察機能を備える必要があります。国家レベルでは、銃禁止法が制定され、かつ、警察が厳格な取り締まりを実施している諸国が同形態に分類されます。そして、国際社会に当て嵌めれば、核保有国に核不拡散の責任と義務を負わせ、いわば、“世界の警察官”の役割を期待するNPT体制の支持者がこの第2の類型となります。
そして、第3の類型となるのは、善人も悪人も併存する現実を受け入れ、かつ、警察機能の不完全性をも考慮した上で、悪人による銃使用に対する正当防衛のために、防御を目的とした善人の銃保有をも認めるとする立場です。正当防衛の必要性は、アメリカにおいて銃規制反対派の強力な論拠となっていますが、これは、警察機能の不備とセットとなる主張です(瞬時における殺傷能力を有する銃の使用者に対し、警察が駆けつけて即応することは現実的に不可能)。この類型は、国際社会にあっては、全ての諸国に核保有を許し、全世界的な核の多角均衡の実現による平和を唱える人々に該当します。(つづく)
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