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2018-02-15 00:00
(連載1)米ロ代理戦争が本格化するシリア
六辻 彰二
横浜市立大学講師
2016年の大統領選挙で「米国第一」を掲げたトランプ氏は「世界の警察官」であることをやめると強調しました。しかし、実際にはトランプ政権のもとで米国の海外での活動は増えつつあります。米軍は1月14日、現地武装勢力への支援を強化すると発表。公式には、IS対策がその理由になっています。しかし、そこにはシリアの現体制を破壊する、あるいは既存の国境線を変更する意図がうかがえます。その一方で、ロシアやアサド政権もまたISをはじめとする「過激派対策」を掲げて、敵対勢力への攻撃を加速させています。各国にとって「共通の敵」であるISが力を失った後のシリアは、米ロ代理戦争の主戦場となりつつあるのです。
1月15日、シリア国営放送は「シリア国内における米国の存在を終わらせる」という政府系の武装組織「シリア・アラブ軍」の声明を報道。これはその前日14日に米国主導の有志連合が発表した「シリアで3万人規模の新たな国境警備のための部隊を発足させる」計画を受けてのものでした。もともと米国はシリアを「テロ支援国家」に指定し、アサド政権と敵対してきました。2014年にシリアとイラクの国境にまたがる地域に「イスラーム国」(IS)が建国を宣言した後、やはりアサド政権と敵対してきたサウジアラビアなどスンニ派諸国とともに、米軍はシリアでの活動を活発化。ISへの空爆の他、アサド政権ともISとも対立する、少数民族クルド人を中心とする武装組織「シリア民主軍」(SDF)を支援してきました。現在、シリアには約2000人の米軍が駐留しているとみられます。その支援を受けたSDFは、2017年10月にISが「首都」と位置づけていたラッカを制圧する一助となりました。今回、米軍はSDFを母体とする「新たな国境警備の部隊」の構想を発表することで、ISへの攻撃を強化すると強調しています。
ただし、そもそもシリアにおける米軍などの活動は、シリア政府であるアサド政権の承認を受けたものではありません。この点で、アサド政権からの要請に基づいてシリアで軍事活動を行ってきたロシアとは異なります。その意味で、アサド政権による「シリア国内で米軍が活動すること自体が国際法違反」という主張にはうなずかざるを得ません。それだけでなく、「IS対策の強化」という米軍の主張そのものに疑問もあります。米軍中心の有志連合とロシア-シリア-イラン連合軍の挟み撃ちにより、2016年にIS掃討作戦は急速に進みました。2017年12月段階で、米軍は「ISが支配地域の98パーセントを失った」と報告しています。
米軍自身がIS掃討の成果を誇っているにもかかわらず、なぜ「新たな国境警備の部隊」を発足させる必要があるのでしょうか。これに関して、米軍は「IS指導者バグダディ容疑者が逮捕・捕捉されていないこと」を理由にあげています。ロシア軍は2017年6月に「バグダディ容疑者が空爆で死亡した」と発表していますが、米軍はこの発表を疑問視しており、「死亡の証拠がない」ことを大義にシリアでの活動を拡大させようとしています。ロシア軍の発表の真偽は定かでないものの、その一方で「バグダディ容疑者がシリアにとどまっている」という証拠もありません。少なくともバグダディという「トロフィー」がロシアに奪われれば、米軍にとってシリアでの活動を正当化する口実がなくなることは確かです。(つづく)
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