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2018-02-14 00:00
(連載2)消防飛行艇と防衛装備の輸出
佐藤 有一
軍事評論家
消防飛行艇の運用を海上自衛隊に委託するとして、現在の救難飛行艇US-2に加えて消防飛行艇を追加配備・運用することが現実問題として可能でしょうか。海上自衛隊にとっては消防飛行艇による消火任務が新しく追加されるのですから、それに対応する人員の増加は当然認められるでしょう。問題は消防飛行艇を取得する予算を計上できるかです。消防飛行艇の出動が要請されるような大規模火災の発生件数は、大規模市街地・工場・倉庫の火災で年間数件、大規模山林火災で年間10数件程度です。救難飛行艇US-2の年間出動件数が約1000件であることを考えると、消防飛行艇の必要性を疑問視する意見が出るかもしれません。しかしながら、予測されている巨大地震による大規模火災に対する備えとして、消防飛行艇が要望されていることは確かです。
消防飛行艇を限られた予算で導入する方策として、岩国と厚木に現在配備されているUS-2をそれぞれ1機ずつ改造することによって、消防装置を追加装備して救難・消防飛行艇とすることを提案します。多目的任務とするために、消防用の水タンク容量は少なくなるかもしれませんが、水タンクの形状を工夫するなどして出来るだけ大きいものを装備したいものです。消防飛行艇としての改造は、過去に対潜飛行艇PS-1で技術実験が行われており、改造に必要な基礎データは取得されているでしょうから、改造期間は短くできると思います。短期間で準備して消防飛行艇としての運用ノウハウと運用実績を早期に積み上げることが、次のステップに進むためにも必要と言えます。
現在運用中のUS-2の改造とは別に、US-2の後継機としての救難・消防飛行艇を新しく導入することも並行して検討するべきです。この時にも、機体価格の問題はどこまでもネックになるでしょうから、設計段階から機体価格の低減のために機体構造の簡易化、安価な構造材料の使用などを考慮して開発することが欠かせません。この新規導入する救難・消防飛行艇を、「防衛装備移転三原則」に基づく防衛装備としての輸出ができるように、機体製造だけでなく点検整備施設、操縦・消火訓練装置、運用訓練・教育などを一体化したパッケージとして、国が主導して推進するべきでしょう。防衛装備の輸出は輸出先国との国同志の交渉になり、輸出先国との同盟・友好関係を通じて日本の安全保障の拡大に貢献することにもなります。国として、政府・官・民を合同したプロジェクトチームを立ち上げるくらいの決意をもって取り組むことはできないでしょうか。
日本が独自の救難・消防飛行艇を開発し輸出するプロジェクトを持っていることを世界中に発信することを考えるべきです。実機を国内・海外の防衛関連の展示会や航空ショーに展示して、日本の救難・消防飛行艇の存在を知らしめたいものです。展示会への操縦・消火シミュレータやパノラマ模型による取水・放水などの展示・実演、さらに航空ショー会場の上空での消火・放水デモンストレーションを実施できれば、より効果的なアピールができることでしょう。残念ながら我が国の一部の国民には、武器輸出に対する根強い懸念の感情があることは否定できません。しかし、救難・消防飛行艇は武装しておらず、武器としての要件は備えていないと見なせます。輸出先国の防災に役立つのですから平和目的と言うこともできるはずです。この点を国民によく知ってもらい、理解と支持を得るように努力したいものです。輸出することに対する国民の理解と支持がない防衛装備を購入したいと思う国は無いでしょうから、これを防衛装備の輸出を実現する環境づくりのための啓蒙活動と位置づけて取り組むべきです。(おわり)
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