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2007-04-17 00:00
ヘッジファンド規制に向けた議論を行うべき
村上正泰
日本国際フォーラム研究主幹
先週末ワシントンで開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会合において、ヘッジファンド規制についての議論が行われた。アジア通貨危機からロシア危機、LTCM経営破綻へと至る国際金融危機を経て、90年代末から2000年にかけてヘッジファンド規制が大きなテーマとなったが、現在再び議論となっている背景には、最近の金融市場におけるボラティリティの高まりを受けて、ヘッジファンドの破綻等に伴う潜在的リスクに対して懸念が生じているためである。
ヘッジファンド規制については、2月の前回会合においても議題として取り上げられたが、これは今年のサミット議長国であるドイツの意向によるものであった。ドイツはヘッジファンドの一層の透明性を求めたが、世界の金融市場の中心であるアメリカとイギリスはこれに強く反対した。投資戦略の情報公開を義務付けると、金融技術の高度化のインセンティブが失われるというのがその理由である。4月の会合は例年アメリカが議長国となるため、今回は2月の声明よりもいささかトーンダウンしている。
確かに、2月及び4月のいずれのG7声明でも指摘されているように、ヘッジファンドが「金融システムの効率化に大きく貢献している」というのは否定し難い事実である。最先端の金融技術を駆使しながら高いレバレッジをかけて巨額の資金を瞬間的に動かす手法がリスクを生み出すからと言って、そのメリットまでをも全否定すべきではなかろう。しかしながら、同時に、メリットがあるからと言って、リスクに対して無頓着であってはならないのである。
ヘッジファンドについては、アメリカやイギリスを中心として、政府規制よりも市場規律を重視する傾向が強い。市場規律が重要であること自体は言うまでもないが、不完全である市場が有効な形で機能するためには、市場の健全性と安定性を確保するための枠組みが必要である。こうした観点から、ヘッジファンドの不透明な実態をもっと明らかにしていくことは不可欠である。
資本移動規制については、しばしばトービン税という一種の取引税の賦課が主張されることがある。しかしながら、実効性を持たせるためには高税率にせざるを得ず、それではかえって弊害が大きくなる。また、租税回避行動をすべて排除することは実務上困難である。したがって、トービン税のような仕組みは非現実的な選択肢であると考えるが、ヘッジファンドの透明性向上と監督強化から逃げるべきではない。サミットに向けてドイツは議長国としてリーダーシップを発揮すべきであるし、日本もまた明確なメッセージを発していくべきであろう。
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