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2018-02-02 00:00
インド太平洋戦略
倉西 雅子
政治学者
与党幹事長による訪中の直後となる新聞記事の中に、安倍首相の一帯一路協力の示唆と並んで、インド太平洋戦略について、“元より中国を対象としたものではない”とする説明があったと記憶しております。この際、対中排除の説明に首を傾げたのですが、中国に対する過度な配慮は、抑止効果を半減させてしまうのではないでしょうか。
昨日、オーストラリアのターンブル首相が訪日日程を終えて帰国の途に就きましたが、これを機に日豪両国首脳はインド太平洋戦略に基づく両国間の軍事協力強化に向けて基盤造りを急いでおります。今般の訪日に関しては、報道各社とも凡そ中国の海洋進出に対する牽制の意図を隠さずに報じていますが、インド太平洋地域における最大の脅威は軍事大国化した中国おいて他にありません。一部太平洋に面してはいても地理的に遠方にあるロシアを、同戦略の主要封じ込め対象と見なすには無理があるのです(ロシアに対しては、NATOが対応している…)。
実際に、中国は、習近平体制の下、南シナ海の違法な軍事拠点化に留まらず、スリランカのハンバントタ港の長期借款による軍港化やパキスタンのダワタル湾への巨額投資など、「一帯一路構想」の実現に向けてひた走っています。表向きは互恵的な効果を謳ったインフラ投資を装いながら、その実、自国の支配圏を拡げるための軍事目的であることは、いわば“公然の秘密”です。仮に中国の行動を野放しにすれば、既にアフリカ大陸への進出が顕著なように、同国は、ユーラシア大陸を越えて全世界を自らの支配下に置こうとすることでしょう。今日、中国の留まるところを知らない拡張主義は、二度の大戦において多大なる犠牲を払って構築された戦後の国際法秩序を根底から覆すリスクを孕んでおり、平和、並びに、人類に対する重大なる脅威である点は否定のしようもないのです。
軍事同盟とは、有事に際しては兵力の結集による量・質両面における増強効果がある一方で、平時にあっても、仮想敵国の攻撃的行動を抑え込む抑止力として働きます。日米同盟に加え、日本国がオーストラリアやインド等の諸国との間で準同盟関係の構築を目指すには合理的な根拠があるのです。万が一に備えての軍事的な対中包囲網の形成は、周辺諸国の自然、かつ、的確なリアクションであり、否、それ以外のオプションを探す方がよほど困難なのではないでしょうか。軍事面における対中包囲網の効果を考慮しますと、中国に対しては、正面から包囲網の存在をアピールする方がその抑止力をも高めることができるかもしれません。この際、曖昧さや保身的な妥協は、中国を増長させこそすれ、命取りともなります。耳に心地よい経済協力の口実を鵜呑みにし、“グローバリズム”をも旗印に掲げる中国の覇権主義に迂闊に同調しますと、その失うものは計り知れないのではないかと思うのです。
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