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2018-01-19 00:00
(連載2)南北“示談”による米韓同盟の行方
倉西 雅子
政治学者
南北が和解した以上、アメリカは、米韓同盟を維持する理由を失い、朝鮮半島から米軍を撤退させることでしょう。この状況は、漁夫の利を待つ中国やロシアにとりましては好都合な展開なのですが、アメリカは、ここで、またもや重大な選択を迫られることとなります。北朝鮮は、韓国側に安心感を与えるため、あるいは、米韓を離反させるためか、核やICBM等の標的はアメリカであると明言しております。このことは、南北の“示談”が、むしろアメリカにとりまして安全保障上の脅威であることを意味しているのです。
つまり、南北間において朝鮮戦争は終結しても、対米戦争だけは継続されるという奇妙な状況が出現するのです。しかも、この場合、アメリカは、対北戦争の最前線基地として韓国に期待することはできません。また、南北が和解して北朝鮮が敵国をアメリカ一国に絞った場合、中ロを含む広範な国際経済制裁網を維持することも困難となります。
仮に、このような事態に至れば、アメリカは、(1)アメリカ・ファーストの立場から、予防的防衛措置として、単独で北朝鮮の核・ミサイル攻撃能力を潰す、(2)“世界の警察官”の立場から、国際的な有志連合を結成して北朝鮮の国際法違反行為を排除する(おそらく、中国やロシアの協力は得られない…)、(3)軍事力の行使を断念する場合には、日本国の核武装やミサイル防衛網の整備等の抑止力の強化等で対応する…といった選択肢の中から何れかを選択することでしょう。もっとも、これらの選択肢やそれに伴うリスクは現状と大して変わりはなく、最大の違いは、軍事行動において韓国軍の協力を得られない点にあります。
北朝鮮問題は、朝鮮戦争が絡む故に複雑化している嫌いがありますが、今般の南北の動きは、朝鮮戦争抜きの北朝鮮問題解決への移行、あるいは、北朝鮮による暴力主義に基づく核・ミサイル開発という問題の本質を明確化しているのかもしれません。何れが選択されるにせよ、北朝鮮問題の解決には、軍事制裁であれ、抑止力強化であれ、暴力主義の封じ込めを要することは言を俟たないのではないかと思うのです。(おわり)
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