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2017-12-01 00:00
自衛隊が米軍による対北軍事制裁に参加するもう一つの意義
倉西 雅子
政治学者
アメリカによる対北軍事制裁の可能性が高まる中、日本国の自衛隊についても、対米軍事協力が現実味を帯びてまいりました。昨今、安保法制の整備もあり、自衛隊の参加は、日米同盟の文脈において議論されがちです。しかしながら、自衛隊の軍事制裁への参加は、もう一つの意義があるように思えます。それは、日本国が“世界の警察官”の一翼を担うという意義です。国連構想とは、第二次世界大戦において戦勝国となった連合国主要五か国に“世界の警察官”の役割を担はしめることにより、国際社会の治安を維持するというものでした。国際法が未整備な段階にあっては、政治問題における“調整役”をも兼ねざるを得ないものの、その基本的な役割は、国際法秩序に基づく平和の維持にあったのです。国連安保理の常任理事国という特権的地位の付与も、“世界の警察官”という重責あってのことであり、国連の枠組にあって、権利と義務とを一先ずはバランスさせたのです。
ところが、発足時において既に米ソ対立という現実を前にして国連は構想通りには機能せず、ソ連邦は、国連常任理事国でありながら、国際法を順守することなく強大な軍事力を背景に周辺諸国を侵略、あるいは、属国化し、“世界の警察官”どころか、さしずめ“世界の無法者”の如くの様相を呈します。アルバニア決議によって常任理事国の席に座った中国も、その悪党ぶりはソ連に優るとも劣らず、南シナ海問題における仲裁判決を無視する態度は、“世界の警察官”の崇高なる精神性とは真逆です。
今日の国際社会の現状は、北朝鮮問題に対する中ロの擁護姿勢から明白なように、当初の国連構想とはかけ離れており、それは、国際社会の治安維持機能の著しい低下を意味しています。今日の国連の仕組みでは国際社会の平和は維持し得ず、その加盟国の多くも、悪しき国による国際犯罪の被害を蒙るリスクに晒され続けているのです。となりますと、今日において議論すべき課題は、国際社会における治安維持機能の向上であり、そのためには、国連等の制度改革も議論の俎上に載せるべきとなります。“世界の無法者”に転じた“世界の警察官”を解任すべきですし(アルバニア決議の逆パターンもあり得るのでは…)、あるいは、アメリカが過剰負担に耐えられないならば、より多くの諸国が警察官の役割と責任を分担する“集団的警察機構”への改組も必要となりましょう。このように、将来に向けた国際社会の方向性や今後の国連の組織改革を展望しますと、今日、日本国がアメリカと共に“世界の警察官”の役割を担うことは、日本国の安保理常任理事国入りの議論においても評価ポイントとなるかもしれません。常任理事国は、真に“世界の警察官”の役割を理解している国が務めるべきあるからです。
中国の習近平国家主席は“中国の夢”を掲げ、自国を中心とした華夷秩序の再構築を目指しておりますが、位階秩序となる同構想よりも、法の支配、民族自決、主権平等の原則に基づく国民国家体系の方が遥かに優っております。中国は、北朝鮮問題を“中国の夢”を実現するための踏み台にしようと目論んでいるのでしょうが、同問題は、中国の利己的構想には与せず、人類が、その倫理的進化に沿った道を選ぶ転換点ともなり得ます。日本国の自衛隊の参加は、この文脈においても重要な意義を持つのではないかと思うのです。
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