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2017-10-26 00:00
(連載2)核兵器禁止条約よりNPTの方が“まし”な理由
倉西 雅子
政治学者
同条約の第4条は、確かに核兵器全廃に向けての措置が記されていますが、ひたすらに加盟国に対して核兵器廃棄の義務履行を求めるのみであり(IAEAとの保障措置協定の締結や国連事務総長への申告等…)、違反国の核保有によって安全保障を脅かされる他の加盟国に許される唯一の措置は、領域内に違反国が設置した核の撤去措置に留まります(第4条4)。第11条でも紛争の解決に関する条文を置いていますが、これも、平和的手段に終始しているのです。
第4に指摘すべき点は、核兵器禁止条約の成立により、核分野における国際法が、内容の異なる二つの法が併存する状況に陥ってしまったことです。核兵器禁止条約では、核保有は如何なる国であれ“違法”と観念される一方で、NPTでは、核保有国による保有は合法的な行為となります。つまり、同一の行為であっても、概念上、一方では違法、もう一方では合法という全く異なる法的判断が成り立つこととなるのです。こうした混合状態は、一つの法域としての国際社会を引き裂く、あるいは、混乱させる要因となりますので、決して望ましいことではありません。
今日、北朝鮮等の核保有が深刻な危機に至っていますが、核兵器禁止条約がNPTに完全に取って替る状況を想定しますと、以上に述べた諸問題により、国際社会は“お手上げ”の状態となるのではないでしょうか。核兵器禁止条約は、北朝鮮のような無法国家には無力なのです。
このように考えますと、ICANは、核の攻撃的使用が懸念される中国やロシアに対して甘い点も含めて、どこか偽善と謀略の匂いがします。ノーベル平和賞の受賞により核兵器禁止条約が関心を集めていますが、国際社会の“治安向上”に対しては、国際法としての一般性の高いNPTの方がよほど“まし”なのではないかと思うのです。(おわり)
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