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2017-10-12 00:00
(連載1)日米欧で最多の日本の選挙の弊害
中村 仁
元全国紙記者
衆院選が告示され、選挙公約の検証、再編された野党への注文、獲得議席の予想などが関心を集めています。何かもっと重要な論点を忘れてはいませんかと、問いたいのです。日米欧の中で国政選挙は日本が突出して多く、その結果、選挙公約は乱造され、財政は選挙対策に使われ、財政赤字が拡大するという構図です。
選挙が多い理由の一つは首相の解散権(憲法7条)です。政権に都合のいいように使われているとか、不意打ち解散はけしからんとか、議論はされています。日経の経済教室(17年10月4日)でも、野中学習院大教授が「不意打ち解散の本家だった英国では、6年前に法律で禁止(規制)された」と、指摘しています。解散には下院議員の3分の2以上の賛成が必要になり、日本もどうにかしたらどうかという問題意識です。
ではいったい、日本ではどのくらい、国政選挙が行われているか。日経のコラム「大機小機」(17年10月7日)が簡潔に触れています。「日本衆参両院の国政選挙は、この10年で今回を入れると、7回目」といいます。同じ期間に英独は3回、仏大統領・議会選は2回、米は大統領・議会選は3回、中間選挙は2回で、日本は突出しています。12年12月の衆院選(安倍首相の政権復帰)、13年7月の参院選(衆参ねじれ解消)、14年12月の衆院選(自公で3分の2獲得)、16年7月の参院選(自公維で3分の2獲得)、そして今回の17年10月の衆院選です。5年で5回です。衆参両院の役割が接近し、参院も首相の選出、信任に大きな影響力を持つようになっています。そのほか、都知事・議員選挙などの地方選も国政を左右するようになり、選挙の年中行事化が進んでいます。
選挙は民主主義の基本で、選挙の意義を否定する人はいません。問題は、こんなにしばしば選挙をやっていると、マイナス(負)の効果が大きくなるのではないかということです。与野党は選挙公約を、十分に練り上げたうえで掲げるのではなく、有権者に受けのいい公約を打ち出すポピュリズム型の傾向が強まっています。メディア、識者、学者、専門家は日本の選挙の多さに伴う弊害をあまり指摘しません。国際比較して日本の選挙を考えてみるより、国内の目先の問題に気を奪われるせいでしょうか。慶大教授・作家の荻野アンナ氏の指摘「公約をじっくり読ませてもらう。各党の公約をすり合わせて判断する」(読売新聞、17年10月9日)は平均値でしょう。(つづく)
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