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2017-10-12 00:00
韓国の経済政策について
真田 幸光
大学教員
庶民に寄り添う大統領のイメージを前面に出し、大統領に就任した韓国の文在寅大統領は貧富の格差の是正には積極的にならざるを得ない状況にあります。しかし、さりとて、成長戦略を怠り、富の再分配にだけ注力できるほど、韓国経済に余裕はありません。こうした中、文大統領は、「革新成長は所得主導成長戦略に劣らず重要である」と述べ、革新成長の概念を速やかに確立し、執行戦略を取りまとめるように関係各部署に対して指示を出しています。革新成長は新政権の経済政策の方向の一つとなっていたはずですが、これまでは、「所得主導」の為の政策が庶民には分かり易い為か、さほど注力されていなかったとも言えるのであります。
こうした中、文大統領はようやく政策基調を見直す意向を示したとも言えましょう。そして、雇用労働部長官は、所得主導成長の柱である「最低賃金1万ウォン」政策の速度を調整する可能性を認めています。また、新政権に近い識者たちも所得主導だけでは不足であるとの警告を発し始めているとの見方も出てきているようでありますが、こうした動きに貧富の格差を意識する一般庶民が納得するのか注目されます。しかし、更に、「税金で公共部門の雇用を創出し、労働者の賃金を引き上げ、経済成長を達成するという所得主導成長論は、どの国でも成功したことがない初めての実験である。企業の革新、価値創造、生産性の向上だけが持続可能な成長をもたらす。難しい理論ではなく、汗を流さなければ豊かにはならないという単純な真理である」との声も出て来ていますが、「既得権益層こそ、汗を流せ!!富を握る者が汗を流さず、富を得ている事こそ問題である」との批判も聞こえています。
そして、「最低賃金の急上昇は雇用減少という逆説的な結果を生んでいる。零細事業者が従業員を減らし、経営に行き詰まった企業が海外脱出の動きを見せている。非正社員の正社員転換、2大指針(一般解雇指針、就業規則指針)廃止といった一方的な“親労働政策”も企業を苦しめている。更に、大企業の法人税引き上げ、同時多発的な企業摘発、フランチャイズ業態に対する規制など“公正経済”の政策を打ち出し、企業の悲鳴が聞こえる」との声が一方で聞こえる中、文大統領は、「股裂き」の状況に追い込まれ、文大統領自身が強く意識する「ノムヒョン元大統領」が悩んだ経済政策のジレンマと類似する課題を既に抱え始めたようにも見えます。
韓国社会では、8月の青年失業率が8月の統計としては通貨危機以降18年ぶりで最悪の水準を記録、韓国政府が本年掲げている3%成長も実現が大きく遠のいている中、高度防衛ミサイル(THAAD)を巡る中国本土の報復、北朝鮮リスクなど外部環境の影響も加わり、賃金問題の後遺症、インフラ事業縮小の影響が本格化すると見られている今後は、状況は更に悪化する危険性が出てきています。文大統領の実のある動きを期待したいと思います。
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