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2017-09-14 00:00
(連載2)限界が露呈した中ロの対北制裁協力
倉西 雅子
政治学者
以上に主要な三つの部門について挙げてみましたが、繊維部門のように一定の成果が予測される部門もあるものの、これらを全て忠実に実施したとしても、北朝鮮が、核・ミサイルの開発・保有を放棄するほどの圧力となるとは思えません。中国外務省は、“完全履行を望む”とする談話を公表していますが、この発言は、対北制裁に対する積極姿勢の表明と言うよりも、制裁効果の限界を見越した余裕から来ているのでしょう。また、北朝鮮は、核兵器の原料となるウランのみならず、各種レアメタル、金、マグネサイトなどの鉱物資源にも恵まれており、今なお諸外国との間で貿易、あるいは、密貿易が行われている可能性もあります。そして何よりも重要なことは、今般の安保理制裁決議の採択によって、対北制裁における中国とロシアからの協力の限界もまた露わになったことです。北朝鮮を温存させるとする両国のスタンスは明瞭であり、今後、更なる核・ミサイル実験等を機に国連安保理の臨時会合が開かれ、制裁レベルを上げた案が提出されたとしても、中ロが、石油の全面禁輸等に同意する可能性はゼロに近いと言わざるを得ないのです。
国連における経済制裁路線が隘路に至ったとしますと、残された道は、(1)国連の枠組みを離れた有志連合による経済制裁(先端技術面での入手ルート遮断…)、(2)米軍による武力制裁、並びに、(3)北朝鮮の核保有の黙認となります。既にロシアは(3)立場を示唆しており、アメリカ国内のリベラル派にも同様の見解が散見されます。中国は、六か国協議の再開によって関係諸国の泥沼の交渉に引きずり込み、状況をできる限り曖昧化することで、(3)に伴う日本国の核武装を封じつつ現状を維持しようとすることでしょう。
となりますと、日本国政府は、(1)の場合には、有志連合による対北制裁を自ら提起する、他国が呼びかけた有志連合に参加する、あるいは、単独で独自制裁を強化するといった選択肢があります。ただし、中ロが不参加の状態での経済制裁頼りには、効果不足のリスクが伴います。また、アメリカが(2)を選択した場合には、北朝鮮からの攻撃リスクを覚悟しつつ、自衛隊は、米軍に全面的に協力することとなりましょう(なお、中ロも、以前は米軍による核・軍事施設の破壊を目的としたピンポイント空爆であれば容認の立場であったのでは?…)。そして、アメリカが(3)を選択した場合には、日本国は、速やかに核武装を実現する、発射前にミサイル破壊、あるいは、発射阻止可能な敵地攻撃能力を備える、並びに、完璧なるミサイル防衛システムを構築せざるを得ないのではないでしょうか。なお、核武装については、たとえアメリカが、ICBMのみの計画放棄で北朝鮮と妥協したとしても、主権平等の原則(NPT体制の崩壊により核保有にも適用…)、過去に繰り返された北朝鮮の合意違反、並びに、中国による核による威嚇と先制攻撃の可能性を考慮すれば(今般の対応でも明らかなように、中国は核保有国としての義務に違反…)、日本国は、核武装を強く主張すべきかもしれません。
時間は待ってはくれないのですから、中ロの立場が明白となった以上、国連安保理の枠組とした経済制裁路線には見切りをつけ、より有効な解決への道に向けて舵を切るべきと思うのです。(おわり)
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