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2017-08-28 00:00
(連載1)北朝鮮のミサイル発射と存立危機事態
緒方 林太郎
衆議院議員(民進党)
北朝鮮からのミサイル発射については、それが日本の「上空」を通る場合、しっかりと迎撃等の措置を講ずるべきだと思います。今日の論点はまず、ここからスタートです。ただ、仮にそれがグアム沖30~40キロを目掛けて行うのであれば、存立危機事態を認定した上で集団的自衛権での対応とする事には明確に反対です。アメリカの領海に落ちる場合であっても、私は存立危機事態を認定する事は極めて困難だと思います。
まず、領海外、排他的経済水域に落下する時のことを考えてみましょう。私がこの場合の法的な整理について、通常国会で岸田外相より得た回答によると、過去の日本のEEZにミサイル発射した際、政府の認定は「主権的権利を害している」とまでは行っていないという事です。あくまでも「国連海洋法条約では妥当な考慮が払われなかった」ということになるようです。EEZに対するミサイル発射に対する日本の立場にかんがみれば、EEZにミサイルを落とす行為は直ちに主権的権利を害するものではないというものである以上、他国のEEZに落とす行為についても(日本として)同様の判断があると考えるのが妥当でしょう。国連海洋法条約でEEZ沿岸国に認められている主権的権利(sovereign right)というのは、主権(sovereignty)ではありません。それよりも一歩手前の概念だとされています。主権ですらない権利を害されている認定が無いのなら、そこに対する自衛権は基本的には成立しないと考えるのが筋です。日本が積極的に集団的自衛権を持ち出す根拠は薄弱です。
もう少し話を進めると、そもそも、それが存立危機事態に当たるのかという問題もあります。もう一度、存立危機事態の定義を思い直してみると、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」です。仮に米国領海内に落ちる場合であったとしても、それが「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とまで認定するのはかなり広げ過ぎでしょう。
一般論として、私は存立危機事態のような事が起きる可能性はあると思います。なので、そこで集団的自衛権を行使する事を否定しません。ただ、法文を普通に読む限りは、相当に切迫した事態です。イメージとしては、武力攻撃予測事態(武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態)であり、眼前で米軍が戦っている状況だろうと思っています。したがって、存立危機事態については、その範囲はかなり限定的であるはずです。特に時間的には数時間、せいぜい1日くらいではないかと思っています。(つづく)
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