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2017-06-29 00:00
「加憲」の意味
緒方 林太郎
衆議院議員(民進党)
憲法改正の議論の中で、「加憲」という考え方が提示されています。この考え方、気持ちは分かるのですが、少し注意する必要があります。恐らく多くの方が考えるものとは幾分か違います。まず、何を加えるのか、という事から考える必要があります。3パターンあると思います。すなわち、(1)今の憲法の解釈の中で認められているものを加える、(2)今の憲法の解釈の中で禁じられているものを加える、(3)今の憲法で(禁じられても、認められてもおらず)全く想定されていない事態について加える、です。
憲法改正の対象になりそうな事項において、(1)である事がかなりあります。ここはとても注意が必要です。現在の憲法でも認められているものを加えるとする場合にどうなるかと言えば、以下の2パターンが考えられます。すなわち、(4)それらの新規の規定については「現行憲法で実は認められていなかった」と解釈し直して、加憲部分で新規の権利義務関係を作る、(5)加憲部分では新規の権利義務関係は生じず、単に「念のため」に確認するためだけ。
論理的にこの2つしか無いはずです。つまり、解釈改憲を伴うか、単なる「念のため」にしかならないか、のどちらかです。何故、そういう事になるかと言えば、現行憲法の歩みがあるからです。現行憲法の中で色々な解釈を駆使してやってきた事から我々は完全に自由になり切れない部分があるため、加憲では上記のような結論しか導けないのです。では、(2)及び(3)についてはどうでしょうか。こちらは純粋な意味での「加憲」に近いです。しかし、例えば「緊急事態条項」について考えてみましょう。やはり、特定の事態において個人の人権等に穴を空けるわけですから、既存の憲法体系に解釈の変更を迫る部分があるように思います。そもそも論として、加憲をした結果、現行の憲法体系の権利義務関係に全く影響を与えないようなケースは殆ど無いと思います。
加憲に留まらず新たな憲法を自由に書いていくのであれば、その自由度はかなり高いです。しかし、加憲という考え方を前面に押し出そうとする時には上記のような事情が生じます。加憲を前面に出して憲法改正をしたら、付随的に既存の憲法体系の解釈改憲がくっ付いてきたというのはあまり筋が良くありません。逆に(特に(1)のケースにおいて)単に「念のため」であれば、その意義はとても減殺します。多くのエネルギーを割く程の価値があるのかも疑問です。なので、憲法改正に際して、無理をして加憲アプローチに乗らない方がいいと思うのです。加憲論者の真摯な気持ちは分からなくはありませんが、こういう結論が導かれるアプローチを強く出し過ぎると憲法改正の議論が混線しかねません。やるなら真正面から「(個々の権利義務関係を修正する)憲法改正」をやると言うのが正攻法です。なお、言っておきますが、私は(9条を含め)憲法改正論者です。
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