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2017-06-24 00:00
グローバル化推進機関
池尾 愛子
早稲田大学教授
欧州連合(EU、本部ブリュッセル)と経済開発協力機構(OECD、本部パリ)はグローバル化推進をめざして協力し合っている。ユーロ圏(ユーロを採用する19カ国)の平均1人当りGDP水準は、先進国クラブとみなされるOECD加盟35カ国の同水準を越えた。ギリシャはEUとOECDの両方に加盟しているが、同国の債務問題はEUの方により大きな問題になっている。それにもかかわらず、ユーロ圏全体の経済的躍進はめざましい。関税撤廃、共通通貨導入という過程を経て、「ルール違反国」が出ても、競争力を強化してきた成果が出ているようだ。
OECDのウェブサイト(www.oecd.org)では加盟国を中心とした経済・金融・産業・社会の統計データが比較可能な形で利用可能である。関連する授業では学生たちにそのデータの利用を強く勧めている。OECD東京センターのウェブページから、「国内総生産(GDP)」をクリックすると、英語の統計データのページにジャンプし、国別1人当りGDP水準の棒グラフが現れる。日本の1人当りGDP水準はOECD平均を下回り、加盟国ではない中国の同水準はそのグラフには登場しない。
「OECD企業・金融業アウトルック2017」(Business and Finance Outlook、英語、5月30日公表)も刺激的である。要旨が中国語を含む26の言語で提供されていて、OECD主導で、英語でのグローバリゼーションひいては社会科学での議論を標準化したいようにみえる。日本語要旨は次のように始まる――「グローバル化は、先進国においても途上国においても、社会の大部分にとってうまく機能しておらず、格差を拡大させ、低技能労働者に辛い思いをさせている、という見方が強まっている。成果を改善するために国内政策でなすべきことは多いが、国内政策と国際政策の連携の改善や国境を越えた企業活動の競争条件をより平等にすることも強く求められている。」
同アウトルック要旨では、「国有企業と過剰能力」と題する一節があり、「助成その他の優遇措置を国有企業(SOE)に付与すると、往々にして、民間企業に付与する場合より大きな歪みが生じる。国有企業は主要な世界の産業部門においてシェアを高めているが、大半はアジアの国々の国有企業である」と指摘している。アウトルック本文を読むと要旨だけ読む時より印象はずいぶん穏やかに変わる。しかし、「アジアでSOEが多い国では、市場規模の大きいことのメリットが活かされていないのではないか」との示唆が、市場規模を拡大することで域外との競争力を向上させて1人当りGDPの上昇を実現したユーロ圏の経験に照らして、投げかけられていることに変わりはないであろう。そして、こうした示唆への反論や対応策も議論され、進められているのではないか。
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