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2017-06-19 00:00
マクロン大統領のEU路線では仏国民負担増では?
倉西 雅子
政治学者
フランス下院選挙では、共和党、並びに、社会党の左右両党から有力幹部を引き抜いて閣僚に据えたことから、“マクロン新党”である「共和国前進」が圧勝するシナリオも現実味を帯びてきました。7割を越える議席を獲得するとの予想もあり、既存政党は、一党支配の阻止に全力を挙げているとも報じられています。ところで、7割という数字からすれば、“マクロン新党”は圧勝と言えるのですが、フランス国民は、マクロン大統領の政策を積極的に支持しているのでしょうか。第一回投票の投票率が最低であることも然ることながら、マクロン大統領の掲げるEU政策は、フランス国民にとりましては財政面では負担増となる可能性があります。
同大統領は、大統領選挙時よりEU深化を基本方針として掲げており、特にユーロ圏共通予算の設立や経済財務相ポストの新設が、財政統合路線として注目されてきました。共通予算の下でEUの財政基盤が強化され、財政権限も拡大すれば、南欧諸国等の債務危機に陥った加盟国を救済したり、加盟国への投資も増やすことができるとする主張です。財政統合は、ソブリン危機を思い起こせば、EUの安定化に貢献するのでしょうが、それは同時にEU内における加盟国間の財政移転の強化を意味します。言い換えますと、豊かな加盟国のEUに対する財政支出が増加する一方で、財政的に苦境にある諸国は、EU予算から支援を受けることができるようになるのです。
マクロン大統領の主張は、豊かなドイツからのフランスへの財政移転を念頭に置いているとする説もありますが、EUの財政の現状を見ますと、フランスは、財政的にはEUに対して出超国です。しかも、同様にEU予算を支えてきたイギリスが離脱するとなりますと、地域政策等の下で現在実施されている南欧や中東欧諸国への財政移転も、他の国が肩代わりする必要があります。となりますと、フランスは、EUから財政支援を受ける側ではなく支援を行う側となる公算が高く、それはとりもなおさず、フランス国民の肩に財政負担が重くのしかかることを意味するのです。
財政統合については、ドイツ国内でも財政負担増から反対の声が根強いのですが、フランス国民は、この問題をどのように考えているのでしょうか。そして、仮に財政統合を実現させたとしても、予算や負担をめぐって、加盟国のみならず、EUレベルの各種利益団体や業界が入り乱れる熾烈な争いも起きないとも限りません。マクロン大統領のEU路線は、フランス国内においても、また、EUにとりましても、波乱含みではないかと思うのです。
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