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2017-06-07 00:00
(連載2)保護主義は絶対悪なのか?
倉西 雅子
政治学者
第2に、自由貿易は、得てして価格面では国際競争力には劣るけれども品質に優る製品を“負け組”として排除する、即ち、“悪貨が良貨を駆逐する”という負の側面があります。100年ほど前に製造された往年のドイツ製品や50年前のアメリカ製品等は、今日の製品とは比較にならないほど品質に優れています。今日、米欧企業の大半が製造拠点を中国等に移転させていますが、“安かろう、悪かろう”では資源の無駄が生じますし、技術レベルでも劣化や断絶が起きます。高品質で長命な製品を低品質で短命な製品から保護することは、必ずしも“絶対悪”とは言えないように思えます。
加えて第3に、安価な輸入品の市場シェアが低下するに連れ、国内市場にあっても、輸入品並みの高品質低価格の製品を目指す企業間競争が始まることです。今日の技術力を以ってすれば、ロボット化や製造プロセスの改善により、途上国のみならず、先進国にあっても低価格化は不可能なことではありません。
例えば、かつて中国はレアアースの輸出を規制し、自ら輸出をストップさせましたが、この措置は、代替品の迅速な開発により、程なく無力化されています。保護主義は、しばしば幼稚産業の保護の側面からメリットが語られてきましたが、代替製品の開発や技術革新の促進といったプラス面もあるのです。
今日の規模追求型の自由貿易主義、否、新自由主義は、13億の市場を擁する中国の独り勝ちを招きかねませんので、無条件の礼賛は禁物なように思えます。先進国の中間層が根こそぎ破壊され、途上国の経済が外資に支配されるような“行き過ぎたグローバリズム”は見直すべきであり、よりバランスのとれた国際通商体制を構築すべきではないでしょうか。闇雲に“保護主義と闘う”態度には、疑問を感じるのです。(おわり)
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