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2017-06-06 00:00
(連載1)保護主義は絶対悪なのか?
倉西 雅子
政治学者
今年のG7サミットはイタリアのシチリア島で開催され、保護主義を訴えて当選したトランプ米大統領の動向が注目を集めました。保護主義色の濃い内容になると思いきや、予想に反して“保護主義と闘う”とする文言が首脳宣言に盛り込まれ、驚きの声が上がっています。
エコノミストの大半は、保護主義が蔓延れば経済成長が鈍化し、世界経済全体に悪影響を及ぼすと口を揃えて主張しています。しかしながら、保護主義とは、撲滅を目指して闘うほどの“絶対悪”なのでしょうか。以下に、幾つかの点を挙げて、反論を試みてみたいと思います。
第1に、この見解、関税率アップによる輸入品価格上昇で消費が減少すれば、国産品に代替されるという側面を無視しているように思えます。輸入品と国産品との間の代替効果は、少なくとも保護する側の国内生産量は増加するわけですから、一般的な通説通り、必ずしもマイナス効果とは限らないはずです。自由貿易の結果として淘汰されてしまった劣位産業が息を吹き返せば、国内の雇用機会は拡大しますし、その分、国民所得も上昇します。
一般には、輸入品価格が上昇すれば一般の消費者は不利益を蒙るとされていますが、失業者が給与所得者ともなれば、多少物価が上昇したとしても家計に余裕が生まれますので、全体的な消費量は拡大します。トータルで見れば、国内生産への切り替えに伴う消費拡大により、景気が上昇しないとも限らないのです。(つづく)
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